小池百合子氏の大誤算。蓮舫議員の都知事選「電撃出馬」が炙り出した“自民党返りの変節”と“政治生命の危機”

2024.05.29
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7月7日に投開票がおこなわれる東京都知事選挙は、前回の2020年に続き小池百合子知事の「圧勝」と見られていましたが、27日に立憲民主党の「顔」である蓮舫参院議員が立候補を表明したことで、空気が一気に変わりました。今まで「自民党批判票」を取り込むことによって支持を得てきた小池氏でしたが、4月の東京15区補選を機に「自民党側」とみなされるようになった知事は、どこで何を見誤ってしまったのでしょうか。毎日新聞で政治部副部長などを務めた経験を持つジャーナリストの尾中 香尚里さんが、蓮舫氏の出馬表明の裏で、政局の“潮目”を読めなかった政治家・小池百合子氏「変節」の足取りを辿ります。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです

プロフィール:尾中 香尚里おなか・かおり
ジャーナリスト。1965年、福岡県生まれ。1988年毎日新聞に入社し、政治部で主に野党や国会を中心に取材。政治部副部長、川崎支局長、オピニオングループ編集委員などを経て、2019年9月に退社。新著「安倍晋三と菅直人 非常事態のリーダーシップ」(集英社新書)、共著に「枝野幸男の真価」(毎日新聞出版)。

立憲民主党・蓮舫議員が東京都知事選へ出馬…小池知事の大誤算

「1日で空気が変わる」というのはこういうことを言うのだろうか。立憲民主党の蓮舫参院議員が27日、東京都知事選(6月20日告示、7月7日投開票)への立候補を表明した。立憲の党内や支持者だけでなく、「反自民」の立場ながら普段は立憲のことも腐しているような層まで含め、ネット上などでは軒並み歓迎の声があふれている。野党側からみるとこの空気感は、2017年に枝野幸男氏が立憲民主党を結党したことに、有権者から「ありがとう!」という声があふれた、あの時に似ているようにも思う。

都知事選で現職が敗北した例はない。前回(2020年)の都知事選で歴代2位の366万票をたたき出した小池氏の「壁」が相当に厚いことは、今も変わりはないだろう。それでも、立憲の「党の顔」である蓮舫氏が、そのリスクを承知で高い「壁」に挑む姿に「非自民」勢力は心を打たれ、わいている。

しかし、筆者が今つくづく思うのは「蓮舫氏出馬」以上に「小池知事の政局勘の衰え」だ。その時々で勢いのある権力者にぴったりと寄り添い、自らの「野望」を次々とかなえてきた小池氏が、70歳を超えて政治家人生の集大成を迎えようという時に、自らの置かれた環境を読み誤り、苦境に追い込まれている。政治の世界の無常を感じざるを得ない。

小池氏の足取りを振り返ってみたい。

小沢一郎の側近、郵政選挙「刺客」の過去も

蓮舫氏同様、テレビの世界でキャスターとして身を立てた小池氏は1992年、後に首相となる細川護熙氏が結党した日本新党に参加した。

同年の参院選で同党の比例名簿2位で初当選すると、翌93年衆院選で衆院兵庫2区からくら替え立候補し当選。自民党が下野し細川連立政権が発足すると、細川氏の側近として頭角を現した。

さらに翌94年に細川政権が崩壊し、同年に日本新党など細川連立政権の各党によって新進党が結党されると、事実上の同党リーダーだった小沢一郎氏の側近となった。

97年の新進党解党に伴い、紆余曲折を経て2002年には自民党に入党。人気絶頂だった小泉純一郎首相のもとで環境相を務めるなどキャリアを積み、05年の郵政選挙では郵政反対派議員への「刺客」として、選挙区を兵庫から東京にくら替えして臨み、大きな注目を浴びた。

自民への“反旗”としての都知事は「避難先」に過ぎず

細川氏、小沢氏、小泉氏という、その時々の有力政治家のそばを渡り歩いてのし上がった小池氏だが、その後自民党の下野と政権復帰を経て、安倍晋三元首相が長期政権を築くなかでは不遇の状態が続いた。すると小池氏は2016年、党に反旗を翻す形で東京都知事選に立候補。ブームを起こして女性初の都知事に就任した。いったん国政から距離を置くことで、自らの政治的延命を図ったのだ。

小池氏の支持の源泉は、女性からの期待もさることながら、大きかったのは「自民党との対決」姿勢だった。自民党的体質を持ちながら、自民党批判票を取り込み人気を博すという点で、かつての小沢氏や小泉氏との共通項を見いだすこともできる。

しかし、小池氏にとって都知事の椅子は、自分を省みない安倍政権からの一時的な「避難先」に過ぎない。おそらくかなり早い段階で、都知事の仕事に飽きたのではないか。

 

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