衆院選出馬を見送り“排除”発言で失敗した「希望の党」騒動
小池氏は都知事になる前の2008年、自民党総裁選に出馬して麻生太郎氏らと戦った。政治家としての自らのゴールを「女性初の首相」に置いているのは間違いないだろう。だからこそ「小池氏の国政復帰」は、ここ数年政界の大きな話題となってきた。
2017年の「希望の党騒動」は、まさに小池氏が首相を目指す動きのはずだった。野党第1党の民進党(民主党から改称)を事実上乗っ取った上で、リベラル勢力を排除した「小池氏好み」の政党に作り替えて、結党で瞬間的に支持が爆上がりした勢いのまま、政権を奪取しようとしたわけだ。
「どうせ安倍自民党が勝つ」という冷めた政界の空気を「1日で変えた」という意味では、今回の蓮舫氏出馬と似たところもある。
ところが、この策動は失敗した。小池氏自身の「排除」発言が失速の大きな原因だったのは確かだが、同時に小池氏が、なぜか自らの衆院選出馬を見送ったのも大きかったと思う。
野党第1党を木っ端みじんにするほどの大政局を仕掛けておきながら、肝心の自分は、自民党を相手に戦うリスクを取って首相の座を目指す覚悟を示さなかった。ならば一体、この「騒動」に何の意味があるのか。有権者の期待は一気に失望に変わった。
小池氏がなぜ国政転出をやめたのかは分からないが、自身にとってこれ以上ない「絶好球」をあっさり見送った小池氏は、この時点ですでに政局観が鈍り始めていたのではないか。
「非自民」どころか「自民と共犯関係」に
自らが「排除」した議員らが結党した立憲民主党が希望の党を上回って野党第1党となり、自民党と対峙する勢力として成長するなかで、小池氏はもはや、国政復帰にあたり「非自民」のスタンスを取ることは不可能になった。当然である。自らの政治生命を一瞬で奪おうとした小池氏を、立憲が許すはずもないからだ。いきおい小池氏は、国政復帰には自民党の力を借りざるを得ない。
一方の自民党も、裏金事件で国民の支持を大きく失うなかで、東京の選挙での不戦敗を避けるため、知名度のある小池氏と連携して「勝ち」を印象づけたい。
小池氏と自民党の間にそんな「共犯関係」が生まれるのは必定だった。それを白日のもとにさらしたのが、今年4月の衆院東京15区補選だ。もっとも、自民党の支持を得るかどうかで陣営は混乱。補選では立憲の新人候補が圧勝し、小池氏が推した候補は5位に沈んだ。
小池氏は「自民党の力をうまく利用する」気でいたのだろうが、逆に自身が「自民党と同じ」とみなされる立場になった。自民党を「悪役」とすることで力を得てきたのに、国政で自民党と鋭く対峙する「立憲の顔」が自らの対抗馬となったことで、小池氏は実際に自民党の支援を受けるか否かにかかわらず「自民党側の候補」と位置づけられることになる。実際、蓮舫氏は27日の出馬会見で「政治とカネの自民党政治の延命に手を貸す小池都政をリセットする」「変節して自民党返りをしている小池さんでは改革はできない」と述べ、小池氏の「自民党色」を強く印象づけた。