プーチンが核兵器を使う可能性は「ある」。元ロシア在住ジャーナリストが予測する独裁者の“非合理的決断”

Yerevan,,Armenia,-,1,October,2019:,Russian,President,Vladimir,Putin
 

自国が提供した兵器によるロシア領内への攻撃を許可した一部の欧米諸国。その動きにプーチン大統領が敏感に反応し、またも核による威嚇を口にし始めています。はたしてロシアはこの先、核兵器使用に踏み切ってしまうのでしょうか。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、その可能性を考察。「戦術脳」であるプーチン氏が合理的とは言えない行動に出ることも十分にあり得るとの見方を記しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:プーチンは核兵器を使うか?

プーチンは本当に核兵器を使う気なのか?元ロシア在住のジャーナリストが解説

全世界のRPE読者の皆様、こんにちは!北野です。

プーチンがまた、「核兵器」で恫喝しています。「ロイター」6月6日付。「ロシアが核使わないとの想定は誤りとプーチン氏、外国メディアと対話」。

ロシアのプーチン大統領は5日、ロシア第2の都市サンクトペテルブルクで外国メディアの上級編集者らと対話を行い、ロシアが核兵器を使用しないと西側諸国が想定するのは間違いだと述べ、米国とその同盟国を射程圏内に通常型ミサイルを配備することを検討していると語った。

ウクライナを巡り核戦争のリスクがあるかとロイターから問われ、「何らかの理由で、西側諸国はロシアが核兵器を使用することはないと信じている」と指摘。

ここでプーチンは、要するに「ロシアが核兵器を使用する可能性がある」と言っています。では、どんな時にプーチンは、核兵器を使うのでしょうか?

「われわれには核ドクトリンがある。ロシアの主権と領土の一体性が脅かされれば、あらゆる手段を行使することが可能と考えている。これを軽々しく、表面的に受け止めるべきではない」と述べた。
(同上)

「ロシアの主権と領土の一体性が脅かされれば、あらゆる手段を行使する」

つまり、「核兵器を使える」ということでしょう。

ところで、「ロシアの主権と領土の一体性が脅かされる」とはどういうことでしょうか?

皆さんご存知のように、ウクライナは、ロシアから領土を奪うつもりはありません。それで、プーチンが核兵器を使うような事態にはならないのでしょうか?

問題は、プーチンがウクライナに侵略して奪った、クリミア、ルガンスク州、ドネツク州、ザポリージャ州、へルソン州です(@4州のうち、ロシアが州全土を支配できているのは、ルガンスク州だけ)。ロシアは、これらの地域を併合しています。だから、ロシア側から見ると、これらの地域は「ロシア領」である。

ウクライナは、勝手に強奪されたこれらの地域奪還を目指して日々戦っている。もしウクライナが、クリミアでロシア軍に勝利し、奪還に成功したらどうなるのでしょうか?プーチンは、「ロシア領土の一体性が脅かされた」として、核を使うのでしょうか?

これ、誰にもわからないのです。おそらく、プーチン自身もわからないのです。そして、ウクライナを支援する欧米も、はっきりはわかりません。

欧米の指導者たちは、「プーチンは、核兵器(特に戦術核)を使うかもしれない」と考えています。それでどういうことが起こっているかというと、「ウクライナ支援が小出しでダラダラしている」のです。なぜかというと、「プーチンが核を使う『レッドライン』がよくわからないから」です。

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