プーチンが核兵器を使う可能性は「ある」。元ロシア在住ジャーナリストが予測する独裁者の“非合理的決断”

 

非合理的な行動を繰り返す「戦術脳」プーチン

さて、プーチンは、核兵器を使うのでしょうか?はっきりわかりませんが、私は「ありえる」と考えています。

「ありえない」という人は、「プーチンはそんなバカなことをしない」とか、「合理的ではない」などと言います。そういう人は、2022年2月23日の時点でも、「プーチンはウクライナ侵攻を決断しない」なぜなら、「合理的ではないから」などと言っていたことでしょう。

私は2021年12月時点で、「プーチンがウクライナ侵攻を決断することは『あり得る』」と言っていました。なぜでしょうか?プーチンは、大統領になってから、戦争ばかりしてきた男です。

  • 第2次チェチェン戦争
  • ロシアージョージア戦争
  • クリミア併合
  • ウクライナ内戦介入
  • シリア内戦介入
  • IS空爆

など。そして、戦争をするたび、プーチンの支持率は上がるのです。

私は、2022年2月24日の前、二つの事を主張してきました。一つは、プーチンがウクライナ侵攻を決断する可能性がある。二つ目は、プーチンがウクライナ侵攻を決断すれば、ウクライナとの戦闘に勝つ負けるにかかわらず、【 戦略的敗北 】は【 不可避 】である。そして、いずれもそうなりました。

■ロシアは、国際的に孤立しました

国連総会で、ロシアの侵略を非難した国は141か国。ロシアの侵略を支持した国は、北朝鮮、ベラルーシ、シリア、エリトリア、「ならず者国家」4か国だけだった。

■プーチンに、国際刑事裁判所から逮捕状が出されました

彼は国際社会で、オフィシャルな「戦争犯罪容疑者」になってしまったのです。

■プーチンは、「NATO拡大を阻止する!」ためにウクライナに侵攻し、逆にNATOを拡大させてしまいました

これまで長年中立国だったフィンランドとスウェーデンがNATOに加盟してしまった。

■プーチンは、「旧ソ連国の盟主」の立場を失いました

ウクライナ、モルドバ、ジョージアが「EU加盟申請」を行いました。アルメニアは、ロシア中心の軍事同盟CSTOから脱退する意向です。中央アジア諸国(カザフスタン、トルクメニスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン)は、ロシアの勢力圏から離れ、中国と「運命共同体」をつくることで合意しました。

■プーチンは、最大顧客だった欧州市場を失いました

欧州は、ロシアの石油、石炭、天然ガスをほとんど輸入しなくなりました。

■ロシアは、SWIFTから排除され、ドル圏、ユーロ圏から追い出されました

■そして、ロシアは欧州向けの石油、ガスを中国に【 人民元 】で輸出するしかなくなりました

■結果、ロシアは、中国の【 属国 】に成り下がったのです

一部ですが、これらすべてが、ロシアの【 戦略的敗北 】です。

私は何が言いたいのか?

プーチンが核兵器を使うのは、確かに「合理的」ではありません。ですが、【 戦略的敗北 】することがわからずウクライナに侵攻することは「合理的」ですか?そう、【 戦術脳 】の彼は、【 非合理的 】なことをするのです。だから、プーチンが「核兵器を使う可能性」はあるのです。そのことがわかっているから、欧米の指導者たちは、常にウクライナ支援に「及び腰」なのです。

もちろん私は、核兵器が使われないまま、この戦争が終わることを、心の底から願っています。

(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2024年6月8日号より一部抜粋)

image by:  Asatur Yesayants / Shutterstock.com

北野幸伯この著者の記事一覧

日本のエリートがこっそり読んでいる秘伝のメルマガ。驚愕の予測的中率に、問合わせが殺到中。わけのわからない世界情勢を、世界一わかりやすく解説しています。まぐまぐ殿堂入り!まぐまぐ大賞2015年・総合大賞一位の実力!

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 ロシア政治経済ジャーナル 』

【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

print
いま読まれてます

  • プーチンが核兵器を使う可能性は「ある」。元ロシア在住ジャーナリストが予測する独裁者の“非合理的決断”
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け