1980年の死刑確定以降に現れた袴田氏の拘禁反応の症状
袴田さんの疾患に焦点を当てると、捜査の強引さは当然であるが、死刑制度の存在そのものが人間への尊厳を崩壊させている実態が浮かび上がってくる。
釈放時の主治医を務めた精神科医の話では「袴田さんの特徴は、拘禁反応の慢性化。拘禁状態では、誰もが程度の差こそあれ発症するが、多くは数日で消える」(東京新聞)と語るが、私はまだそれが信じられない。
再審で無罪が出た時に、どんなに喜ぶのかを見てみたいと思うのはケアの視点から強く願う。
袴田さんの症状は1980年の死刑確定以降で、「激しい興奮を示す」「食事や排せつ物を用いたいたずら」「面会の拒否」「『悪いやつが電波を出している』などの妄言」があったという。
アムネスティ・インターナショナルは「特に日本の死刑囚については、独居房で過ごすうちに、孤独の中、死の恐怖に日々おびえ、精神がさいなまれていく。毎朝次は自分が処刑される番だという恐怖にさらされることになる」と報告し、制度そのものに疑問を呈し続けている。
2014年、国連自由権規約委員会は日本政府報告審査で「死刑執行に直面する人が『心神喪失状態』にあるか否かに関する精神状態の検査が独立していないこと」に留意する」とし、「死刑確定者に対して非常に例外的な事情がある場合であり、かつ、厳格に制限された期間を除き、昼夜独居処遇を科さないことにより、死刑確定者の収容体制が残虐、非人道的あるいは品位を傷つける取扱いまたは刑罰とならないように確保すること」「死刑確定者の精神状態の健康に関する独立した審査の制度を確立すること」を勧告した。
先進国で米国とともに死刑制度を残す日本は国際社会では少数派である。
加えて、刑務所の中が密室化され、捜査機関による取り調べの可視化も実現せず、法務省が威厳として守ろうとする密室性は安全を保障する仕組みとはかけ離れている実態もある。
袴田さんが症状から回復することをお祈りしたい。
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image by: 袴田巖さんに無罪判決を! 【袴田事件】









