スティーブ・ジョブズ本の翻訳者が、彼の一人称を「僕」にしたワケ

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スティーブ・ジョブズやイーロン・マスクの著書の翻訳を手掛けた翻訳家、井口耕二さん。彼の仕事術と翻訳の技法を綴った一冊を今回、無料メルマガ『毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン』の著者である土井英司さんが紹介しています。

【興味津々。】⇒『「スティーブ・ジョブズ」翻訳者の仕事部屋』

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「スティーブ・ジョブズ」翻訳者の仕事部屋

井口耕二・著 講談社

こんにちは、土井英司です。

本日ご紹介する一冊は、『スティーブ・ジョブズ I・II』、『イーロン・マスク 上・下』、『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』などの翻訳で知られる井口耕二さんが、その仕事術と翻訳の技法を綴った一冊。

世界同時発売までわずか4カ月。スケジュール前倒し。原稿届かず。変更アリ。

過酷な状況のなか、著者がどうやって一大翻訳プロジェクトを完遂したか、その一部始終が書かれています。

出版に関わる人間なら、「そんなの無理だ」と匙を投げてしまいそうなものですが、それをハイクオリティで成し遂げてしまう著者の仕事術と心構えに、心から敬意を表します。

土井は、翻訳者を目当てに本を選ぶということは滅多にしないのですが、ごくわずかに例外がいます。

『暗号解読』『フェルマーの最終定理』を訳した青木薫さん、『イノベーションのジレンマ』『ゆとりの法則』を訳した伊豆原弓さん、そしてこの井口耕二さんです。

もちろん、他にも素晴らしい翻訳者はいますが、この3名が訳した本は、読んでいて本当にワクワクします。

今回、井口さんの本を読んで、そのワクワクの裏に隠された壮絶な努力・手間がわかり、感慨深いものがありました。

なぜウォズニアックが「ぼく」で、ジョブズが「僕」なのか。なぜ“down the hall”を「廊下の向こう側」ではなく、「ホールの反対側」と訳したのか。

翻訳あるいは翻訳の仕事に興味のある方は、発売後に出された批判への回答を読めば、著者がいかに考えて訳出しているか、その奥深さに驚くと思います。

フィギュアスケート選手、東大工学部、大手石油会社を経て、フリーランスの翻訳者になったという異色の経歴も面白く、第3章<出版翻訳者の「塞翁が馬」人生>は、キャリアを考えるヒントとしても読めると思います。

編集を、土井の『「伝説の社員」になれ!』の担当編集者、青木由美子さんが担当しているということもあり、これが面白くないわけがありません。

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