市長に反省の色なし。静岡・湖西市いじめ隠ぺい事件で被害者が行政側から受けた「あまりにも酷い仕打ち」

 

湖西市の明らかに違う力の入れどころ

一方で、私が発案し被害側の合意を得て提案した、市長部局にいじめ等々に対応する監察課を設けて積極的なアプローチによっていじめの芽を摘み、仮に重大事態な問題が起きている場合についても教育視点でのアプローチではなく行政、法律的なアプローチと同時に被害者支援を担う「大阪寝屋川市型のいじめ対策プラン」については、2024年10月スタートを目標に準備室を作って進めているという。

さらに市長は、こども家庭庁から国の採択を頂いたのだとしたのだ。

どうやらこども家庭庁でのモデルケースにするようなのだが、こうしたことは被害側には全く伝わってこないのである。

市長 「いじめの早期発見、早期防止、重大事態防止というアプローチはですね、これは、組織としてこれはしっかりと進めていきたいなと思っています」

この発言もそのままの意味で受け取れば、それが出来たら越したことはないのだが、物事の順序を考えるに、今起きている問題の検証も済まないままに、国の採択はサラッと通し、予防策を講じるというのは、そもそもの問題がわからないままに新たな策を講じることになるわけだから、力の入れどころが違うのではないかという違和感が強く残るのだ。

立場によっては、「重大事態にさせないために」湖西市いじめ隠ぺい事件のように、いたずらに対応せずに時間を浪費させ長期化し風化するように促し、被害側が精神的に疲労困憊して「もういいです」というのを狙っているのではないかと捉えることもできよう。

未だ誠意ある謝罪を受けていない被害者サイド

湖西市いじめ隠ぺい事件では、被害保護者が粘り強く交渉を重ね、精神的に追い詰められたり、村八分のような嫌がらせを受けるなどに耐え、何とか戦ってきたから第三者委員会が立ち上がり、いじめ認定という結果を得たという部分が大きい。

そして、この粘り勝ちによって、湖西市では誰も気がついていないかもしれないが、市の「いじめ防止基本方針」が改定され、国のガイドラインに近い対応が期待できるようになった。2024年10月スタート予定の大阪寝屋川式の監察課プランも本件事件がきっかけである。

つまり、この大いなる犠牲は、これからの湖西市の児童生徒並びにその保護者や教職員など学校を取り巻く方々へ「正しいいじめ対策」の基礎を作ったに等しい。

が、しかし、ここで犠牲と書いた通り、被害側は未だに謝罪を受けていない。確かにへらへらした態度で当時の教育長は謝ったようだが、その他関係者は未だに謝らず、中には出世と思われる人事を受けた者もいる。さらに、本来は行われるはずの進学進路において誤情報を与えられその道を狭められるなど将来に関しても回復不能な被害を被っているのだ。

湖西市は責任ある自治体行政として、こうした被害回復に努める責務があるだろう。市長が、未だに「被害者」と言わずに「あっち側」「相手側」と呼ぶようだから、まさに敵視しているようにも思えるが、それは過去の自分の行いが簡単な謝罪や説明ではいいわけがつかないほど長期に無視を決め込んでいるからに違いないだろう。

まずは対話を普通に行うべきであり、1年間に2回の接触はコミュニケーションではないと己の辞書に書き込むべきであろう。その上で、少なくとも週に1度、担当部局は被害側と話し合いの機会を持ち、早急に検証委員会を発足させなければならない。

そうでなければ、どんなに素晴らしい対策を国の採択を受けて発足しても、汚点の上でのスタートになるであろう。こども家庭庁は「こどもまんなか」というスローガンを掲げているが、その「こどもまんなか」を「おとなまんなか」の考え方で歪めてはならないのだ。

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