目には目を、核には核を。徹底的にプーチンを潰しにかかる欧州「ロシア恐怖症」の深刻度

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これまで事あるごとに「核の威嚇」を繰り返してきたプーチン大統領。しかし6月7日に突如、「ウクライナで核を使う必要はない」との見解を示したことが大きく報じられています。なぜプーチン氏はこのような発言をするに至ったのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、「プーチン翻意」の真相を解説。さらにウクライナ戦争の最新の戦況を詳しく紹介しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:ロシア領内攻撃で核エスカレーションが起きている

ロシア領内攻撃で核エスカレーションが起きている

ウクライナ戦争で、ウ軍は欧米兵器によるロシア領内攻撃を行ったが、プーチンは核の脅しを強めている。今後を検討する。

ロ軍は、ハルキウ国境を超えて攻撃してきたことで、欧米諸国はウ軍へ供与した兵器でのロシア領内への攻撃を容認し、その攻撃で、ロ軍はこの方面での損害が大きくなり、特に補給トラックのHIMARS爆撃で補給ができなくなった。

このため、攻撃の重点を再度、ドネツク市北側のオチェレティネ周辺に移したようである。

米国も、ハルキウ州、スームィ州やチェルニーヒウ州の国境付近へのロ軍軍事目標への攻撃を容認したが、ATACMSの使用を許可せずに米武器での攻撃を細かく指示してくる。ロシアの核攻撃を恐れていて、エスカレーションを高めないようにしている。

これに反して、マクロン仏大統領は、ロシアの核攻撃に対してウ軍の核反撃を行う準備をするようだ。「ミラージュ2000-5提供のための訓練が数日以内に始まる」と言及したが、スェーデンのグリペン戦闘機の供与をやめた理由は、F-16の訓練を優先するとしたが、実は核反撃を想定して、ミラージ2000-5の訓練を優先することであったようだ。

F-16訓練の人数が米国は16人に絞っているので、ウクライナは、米国で訓練を開始できるパイロットが30人いるというが、また、2年程度で供与される90機のF-16もパイロット不足で稼働できないし、米国は戦術核供与をしないので、ロシアの戦術核攻撃を受けた時の核反撃ができない。

フランスには、ミラージュ2000Nが核搭載可能であり、ウクライナがもし戦術核での攻撃を受けた時には、フランスはミラージュ2000Nと戦術核の供与をして、報復攻撃を可能にするようである。

このことで、ロシアの戦術核攻撃に対応することで、ウクライナへの核使用の抑止力を効かそうとしているようであるが、徐々に核使用のレベルが低くなってきたように見える。

このフランスの対応とは違い、トランプ氏最側近によれば、ウクライナが領土を奪還することは不可能なので、これ以上領土を奪われないように武器支援はするが、ロシアとの和平交渉を受け入れることを条件とする。和平が実現すれば、ロシアと欧州を和解させ、G8にも復帰させ、中ロを離間させる。中国こそが最大の敵と見ている。

というように、トランプ政権では、ロシアより中国を敵対視するようである。EUは、中国よりロシアが怖いので、ロシアを徹底的につぶす方向であり、核には核という対応を推し進めることになる。トランプ氏は、ハンガリーやチェコ、ポーランド、バルト3国の人々のロシア恐怖症を理解していない。このため、米欧の戦略の差が出ている。

しかし、ウクライナ最大のドニプロ水力発電所がロシア軍の攻撃を受け、発電能力を失うなど、ロ軍の電力インフラ攻撃で、ウクライナから30GW相当の発電能力がなくなっている。このため、キーウでの停電時間が20時間という事態になっている。ほぼ、原子力発電所の電力しかない状態である。

この電力量であると、ドローンなどの兵器製造でも支障が出ているはずであり、ロ軍からの領土奪還でも大きな支障になることが確実である。その意味では、トランプ陣営の言うこともわかる。

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