老舗天ぷら店「カスハラ事件」は本当に迷惑行為だったのか?カスハラブームに踊るひと疑うひと…背景に厚労省の思惑も?

2024.06.12
by 東山ドレミ
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流行り物に目がない小池都知事がカスハラ防止条例制定に動くなど、世はまさに「カスタマー・ハラスメント」ブーム花盛り。すぐに怒鳴り散らす迷惑客は中高年男性に多いとされ「脳が萎縮している」と揶揄されることも。一方で視点を変えれば、このカスハラブームは、国民の健全な批判精神まで萎縮させてしまうことになるかもしれない。

老舗天ぷら店での「カスハラ」に“賛否沸騰”のナゼ

暴言や恫喝など、客が優位な立場から従業員に言いがかりをつける迷惑行為「カスタマー・ハラスメント」(カスハラ)が社会問題化している。これらの事案は、防犯カメラ映像や再現動画を用いてテレビでも連日センセーショナルに報じられているから、一度は目にした方が多いだろう。

それらカスハラ動画では、客から「死ね」「殺すぞ」といった罵詈雑言が従業員に浴びせられる。中には土下座を強要する客もおり、思わず眉をひそめてしまう。同じようなトラブルに巻き込まれた経験をもつ人は多いようで、「犯人を逮捕しろ!」の声が溢れるのもネットではお馴染みの風景となった。

だが逆に今、一部SNSでは、マスコミ報道におけるこの空前のカスハラブームは、つくられた偽りのブームなのではないか?と考える人も出てきているようだ。

そんな「疑問の声」が顕在化した一例が、老舗天ぷら店の「銀座 天一」(東京都世田谷区)で今年4月に発生したカスハラ事案だ。FNNが11日、独自に動画を入手して伝えたもので、会計間違いに激怒した客が、店が謝罪した後も10分間怒鳴り続け、土下座などを要求した「典型的なカスハラ事案」として報じられた。

ところが、このカスハラ事案に対する世間の反応は、意外なほどに“二分”されている。もちろん、店長や従業員に同情する声のほうが多いのだが、そんな中で店の対応や報道のまずさを指摘する声が少なくないのだ。

 

「前提として、土下座を人に強いるのは強要罪にあたりますので、その点、この男性客に同情の余地はありません。ただ、このニュースはいろいろとツッコミどころが多いんですよ。この男性客は、代金1万円のところ2万円を請求されて怒っています。酒に酔っていた男性客に2倍の請求をしたのは女性店員とみられ、激怒した男性客が責任者の店長を呼びつけて叱責している、という構図です。ネットでは『これって店のほうも相当に悪いんじゃない?』との声が少なくありません」(ネットメディア編集デスク)

具体的に、どんなツッコミどころがあるのか?

「男性は1人客で、グループではないようです。動画をみるかぎり、店内が混雑している様子もありません。そのため接客やレジ打ちの経験がある人たちから、『この状況でいったい何をどう間違えたら、1万円の会計が2万円になってしまうんだ」という指摘が相次いでいます。仮にレジを打ち間違えたとしても、2万円という数字が出てきた時点で何かおかしいと気づくのが普通。誰にでもミスはあるとはいえ、理由に納得がいくミスとそうではないミスがある、ということですね。

また、現金を扱う機会が多い飲食店では、従業員によるレジの『空打ち』と呼ばれる不正が長年の問題になっており、女性店員が代金1万円のところ2万円を受け取って、余った1万円を着服しようとしたのではないか、との疑いの声もあがっています。男性客は酒に酔っていたそうですし、疑わしい状況ではあるんですよ。

さらに万一、従業員ではなく店ぐるみの不正ということになれば、これはさらに悪質です。天ぷら店という業態から、東京都のぼったくり防止条例の規制対象にはならないにせよ、それに類する不当な取り立てがあったのではないか?との指摘も見られます」(同)

問題は、このFNNのニュースが、正確な飲食代の明細や、男性客が「土下座要求」にいたるまでの詳しい経緯を伝えていないことだ。本来、これらに触れずに「典型的なカスハラ事案」と断じることはできないはず。「典型的なぼったくり未遂」ではないという確認はきちんと取れているのだろうか。

「カスハラブーム」には裏があるのか?一部で囁かれる懸念

「今回の天ぷら店にかぎらず、猫も杓子も『カスハラ』連呼という昨今の風潮に、違和感を覚える人は少しずつ増えている印象です。その中でも一部の人々は、『カスハラの実態』と『カスハラ報道』の間に大きな乖離があるのではないか?と分析していて、なかなか興味深いです。根底にはマスコミに対する不信感があるようですね」(同)

カスハラの「実態」と「報道」が乖離している、とは具体的にどういう意味か?

「世の中に理不尽なカスハラがあるかないかでいえば、それは確実にありますし、カスハラをなくしていくべきというのも正論です。ただ、接客やカスタマーサポート業務における『迷惑客』は、昭和の時代から存在するもの。なぜ今になって急に、国やマスコミが『カスハラ対策』を声高に叫びはじめたのか?と、彼らは違和感を抱いているのです」(同)

だが、厚生労働省が先月17日に発表した「職場のハラスメントに関する実態調査」によれば、パワハラやセクハラが減少傾向にあるのに対してカスハラは増加傾向にあるようだ。「カスハラ対策」が叫ばれるのは当然ではないか?

「はい。ただ、この手の調査は、問題の存在を無視すればゼロにもできるし、頑張って鉛筆を舐めれば『カスハラが大変だ!』という結果にもできてしまう性質のものでしょう。日本のお役所、とりわけ厚労省の発表資料を素直に信用できるかというと、それは個人的にもちょっと厳しいかもしれません」(同)

厚労省は、カスハラ問題で何らかのミスリードをしていると?

「それはわかりません。でも、日本全国におけるカスハラ被害の実態など、誰も正確には把握していないということは言えるはずです。たとえば、『クレーム発生件数×客の悪質度合い』という式でカスハラ被害の全体像を把握しようとした場合に、たとえば25年前と現在を比較して被害は拡大しているのか、そんなわけないでしょ?という疑いの意見には、一定の説得力があると思います」(同)

コンプライアンス意識の高まりから、パワハラやセクハラなどの基準も年々厳しくなってきている。カスタマー・ハラスメントも同様であるべきでは?

「そうですね。でも国やマスコミの“悪意”を疑う人々は、なぜ今、国やマスコミが『カスハラ問題』の解決を叫ぶのか?労働者保護という大義名分とは別に、何か別の目的があるのではないか?日本という国に、正当な批判までしにくいムード、声をあげにくい空気感を醸成しようとしているのではないか?と懸念しているようです」(同)

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