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Appleの時価総額を500兆円超にまで押し上げたAI技術「Apple Intelligence」をGoogle日本元社長がポイント解説

人工知能の分野において、これまで時代をリードしてきた企業らしからぬ「出遅れ」が指摘されてきたApple。そんなIT大手が満を持して発表したAIへの取り組みが大きな話題となっています。今回のメルマガ『『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』~時代の本質を知る力を身につけよう~』では、『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』等の著作で知られる辻野さんが、同社のAI技術「Apple Intelligence」のポイントを整理し解説。さらにその将来の姿についても考察しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:アップルがWWDC2024でApple Intelligenceを発表

プロフィール辻野晃一郎つじの・こういちろう
福岡県生まれ新潟県育ち。84年に慶応義塾大学大学院工学研究科を修了しソニーに入社。88年にカリフォルニア工科大学大学院電気工学科を修了。VAIO、デジタルTV、ホームビデオ、パーソナルオーディオ等の事業責任者やカンパニープレジデントを歴任した後、2006年3月にソニーを退社。翌年、グーグルに入社し、グーグル日本法人代表取締役社長を務める。2010年4月にグーグルを退社しアレックス株式会社を創業。現在、同社代表取締役社長。また、2022年6月よりSMBC日興証券社外取締役。

アップルがWWDC2024でApple Intelligenceを発表

生成AIの出現で激化している3つ巴4つ巴のテックジャイアントやベンチャーたちのAI開発合戦の渦中において、断片的にFerret等の発表はあっても出遅れ感が強かったアップルですが、米国時間6月10日のWWDC2024(Worldwide Developers Conference、世界開発者会議)において、ようやくAIへの取り組みの全容を発表しました。

ワシントン・ポスト紙は、グーグルが今年、AIに四半期ごとに120億ドル(約1兆8,000億円)を投資し、マイクロソフトも直近の四半期で140億ドル(約2兆2,000億円)を投資したことから、今後もAI投資はさらに過熱する見通しだと報じていますが、アップルの発表は、ユーザーとアナリストの双方から長く待ち望まれていたものでもあります。

既に多くの速報が出回っていますが、本件を取り上げないわけにもいかないので、私見も交えてポイントを簡単に整理しておきます。

ちなみに、発表の翌日11日の同社の株価は一時7%上昇して終値はこれまでの最高値を8ドル上回る207ドルに達し、ナスダック上場以来最高値を更新し、翌日も更に上がっています。その結果、同社の時価総額は、円換算でついに500兆円を超えました。トヨタの10倍です。現段階で500兆円超えの企業はマイクロソフトとアップルの2社だけで、エヌビディアがそれに続いています。

今回の発表における最大のメッセージは、「Apple Intelligence」と名付けた同社のAI技術を、iOS 18、iPadOS 18、macOS Sequoiaに組み込むということと、OpenAIのGPTへのアクセスもこれらに統合する、ということでしょう。

「Siri」はアップルのAI戦略において重要なUI(ユーザーインタフェース)ですが、iPhoneユーザーは、Siriとより自然な会話が出来るようになり、Siriをデジタルアシスタントとしてさまざまなことが出来るようになります。他社との差別化の要素としては、ユーザーのプライバシーに配慮しつつ、よりパーソナルコンテキストに基づいたアシスタントをしてくれるということのようです。

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GPTは、追加料金なしで利用でき、Siriが特定のプロンプト(質問)に対応できない場合などにSiriを支援する形で連携するようです。ただし、Siriは、ユーザーにGPTとプロンプトを共有する許可を求め、ユーザーが許可を与えると、SiriはGPTと連携して回答するようになります。「Siri powered by GPT」といったイメージですが、ユーザーのプライバシー保護を重視するアップルらしいアプローチと言えます。

アップルとしては、AI開発において先行するOpenAIに敵わないところは、割り切ってGPTに任せることにしつつ、ユーザーのプライバシー保護を重視する立場から、ローカルデバイス側で機能するAIモデルやチップを独自に準備して、他社のクラウドベースのAIよりも高いレベルのプライバシーを提供することを差別化のポイントにしています。アップルとOpenAIの提携はかねてから噂されていましたが、OpenAIを介してマイクロソフトとアップルが手を結んだと見ることもできるでしょう。まさに最強連合です。

ただし、アップルはGPTをプラグインとして位置付けています。同社によれば、将来的には他のAIモデルも利用可能になり、ユーザーが利用するAIを選択できるようにする予定だそうです。つまり、最終的にApple Intelligenceの性能が十分高いレベルに成長すれば、OpenAIのような外部企業に頼らなくてもよいように設計しているのだと思います。

なお、いよいよ日本でもApple Vision Proが6月28日に発売されることになり、14日から予約注文の受付が始まります。Apple Intelligenceとの連携に向けたvisionOS 2も同時に発表されましたので、これからは日本でも市中でVision Proを装着してAIと会話しながら歩く人の姿を見掛けるようになると思います。

アップルは、今回発表したAI新機能が利用可能になる時期を明らかにしてはいませんが、今後3~4カ月以内には使えるようになるのではないかと見込まれています。

最後に、以前にも何度か掲載した自作のAI相関図を更新しておきます。

生成AIの開発相関図(最新版)

※本記事は有料メルマガ『『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』~時代の本質を知る力を身につけよう~ 』2024年6月14日号の一部抜粋です。このつづきに興味をお持ちの方はぜひご登録ください。

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辻野 晃一郎(つじの・こういちろう):福岡県生まれ新潟県育ち。84年に慶応義塾大学大学院工学研究科を修了しソニーに入社。88年にカリフォルニア工科大学大学院電気工学科を修了。VAIO、デジタルTV、ホームビデオ、パーソナルオーディオ等の事業責任者やカンパニープレジデントを歴任した後、2006年3月にソニーを退社。翌年、グーグルに入社し、グーグル日本法人代表取締役社長を務める。2010年4月にグーグルを退社しアレックス株式会社を創業。現在、同社代表取締役社長。また、2022年6月よりSMBC日興証券社外取締役。

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【著者】 辻野晃一郎 【月額】 ¥880/月(税込) 【発行周期】 毎週 金曜日 発行

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