イーロン・マスクと「AIのゴッドファーザー」が旧Twitter上で繰り広げた“子供の喧嘩”は、米国のエネルギーの源か?

Paris,,France,-,June,16,,2023:,Elon,Musk,,Founder,,Ceo,
 

2023年7月にイーロン・マスク氏が設立した、人工知能の開発を行う企業「xAI」。同社に関するマスク氏のX(旧Twitter)へのポストをめぐり勃発した「一悶着」が一部メディアで報じられ話題となっています。今回のメルマガ『『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』~時代の本質を知る力を身につけよう~』では、『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』等の著作で知られる辻野さんが、マスク氏とメタ社のAI部門トップのヤン・ルカン氏がX上で繰り広げた「喧嘩」の様子を紹介。その上で、互いに負けず嫌いな性格を隠すことのない大物2人のやり取りから感じた率直な感想を記しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:メタのAI部門トップ ヤン・ルカンとイーロン・マスクの喧嘩

プロフィール辻野晃一郎つじの・こういちろう
福岡県生まれ新潟県育ち。84年に慶応義塾大学大学院工学研究科を修了しソニーに入社。88年にカリフォルニア工科大学大学院電気工学科を修了。VAIO、デジタルTV、ホームビデオ、パーソナルオーディオ等の事業責任者やカンパニープレジデントを歴任した後、2006年3月にソニーを退社。翌年、グーグルに入社し、グーグル日本法人代表取締役社長を務める。2010年4月にグーグルを退社しアレックス株式会社を創業。現在、同社代表取締役社長。また、2022年6月よりSMBC日興証券社外取締役。

子供の喧嘩か。負けず嫌いなイーロン・マスクとAIのゴッドファーザー

本メルマガでは、AIを巡る話題についても多く取り上げてきていますが、「AIのゴッドファーザー」と呼ばれる人物の筆頭が、以前にここでも紹介したジェフリー・ヒントンです。ヒントンは、米国からカナダのトロント大学に移籍してから多くの優秀な門下生を育てています。

その中には、ヒントンと共にALEX Net(画像認識AI)の構築を手伝い、OpenAIの立ち上げにも関わったイリヤ・サツキーバーや、現在、メタのAI部門トップを務めるヤン・ルカンなども含まれています。ちなみにサツキーバーは先日OpenAIを辞めました。

ヒントン、ルカン、そして現在カナダのモントリオール大学教授のヨシュア・ベンジオの3人は、深層学習(ディープラーニング)に関する研究が高く評価されて、2018年のチューリング賞を揃って受賞しています。その結果、この3人を「AIのゴッドファーザー」と呼ぶこともあります。

そのヤン・ルカンが、5月22日に公開されたフィナンシャル・タイムズのインタビューの中で、OpenAIのChatGPTやグーグルのGemini、メタのLlamaのような大規模言語モデル(LLM)を基盤とするAIでは、将来的に「人間レベルの知能には到達できない」と語っています。

ルカンは、「LLMに基づくAIモデルは、膨大な量のデータを使って訓練されるが、正確な答えを導く能力は、訓練されたデータの性質によって制限される」と語っており、「正しい答えを導き出すのは、これらのモデルが適切なデータで訓練された場合に限る」としています。

さらに、「LLMは、限られたロジックの理解しか出来ず、永続的な記憶を持たず、物理的な世界を理解せず、階層的な計画を立てることができない」と説明し、「理にかなった推論は行えない」と結論付けています。

そして、「人間と同じレベルのAIを望む研究者は、他のモデルに目を向けるべきだ」と語っていますが、彼は、メタのAI研究組織であるFundamental AI Research(FAIR)において、約500人からなるチームと共に、「ワールド・モデリング」と呼ばれる別のアプローチに基づく次世代のAIシステムの開発に取り組んでいることを明らかにしています。これについては、「システムが周囲の世界を人間のように理解し、何かが変わった場合に、何が起こるかを予測する感覚を養うものだ」としており、ワールド・モデリングのアプローチに基づいて人間レベルのAIを実現するには、最大で10年程度かかるだろうと予測しています。

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