イーロン・マスクと「AIのゴッドファーザー」が旧Twitter上で繰り広げた“子供の喧嘩”は、米国のエネルギーの源か?

 

「もっと努力しろ!」ルカンに言い放ったマスク

5月27日、米国はメモリアルデー(戦没将兵追悼記念日)の祝日でしたが、ルカンとイーロン・マスクがX(旧ツイッター)上で口論を繰り広げて話題になりました。最初に口火を切ったのはルカンの方でした。

マスクは、自身が新たに立ち上げたスタートアップのxAIに、人材勧誘の投稿をして、「人気や政治的妥当性にとらわれず、真実を最大限に追求することが宇宙を理解するために必要だと信じるなら、ぜひxAIに参加してください」と呼び掛けました。

すると、それにルカンがリプライして、「あなたが、クレイジーな陰謀論やホラ話を吹聴する上司に耐えられるならどうぞ」などと揶揄したのです(以下参照)。

これにたくさんの野次馬が参戦して延々とやり取りが続くのですが、興味がある方は以下を参照してください。

https://x.com/elonmusk/status/1794981927125987683

マスクとのやり取りを少し抜き出しておくと、ルカンの「私は科学者であり、ビジネスやプロダクトの人間ではない」いう投稿に対し、マスクは「この5年間、君はどんな『科学』をやってきたんだ?」と尋ねます。それに対してルカンは、「2022年1月以降80本以上の技術論文を発表した。君はどうなんだ?」と返事をします。マスクは、「取るに足らないね。君は衰えてきているよ。もっと努力しろ!」と言い放っています。これに対してルカンは、「君はまるで私のボスみたいなことを言うんだな」と嬉し泣きの絵文字を添えて返事をし、その後もやり取りは続きます。



ルカンはマスクに、テスラが採用する今日の運転支援システムの全てが、自分が生んだ畳み込みニューラルネットワーク(CNN)に依存していると主張しますが、マスクは「正直、最近はCNNをあまり使っていない」と応じています。

ルカンは、今年3月にも、マスクが掲げるAIの将来的なビジョンを否定して「現状のAIは人間の知性のレベルには全く及ばない」と述べているのですが、それ以前にも、2017年に、当時のトランプ大統領からマスクは距離を置くべきだと忠告しており、2人の確執は長く続いているようです。

今回の2人の口論は、マスクのxAIがシリーズBラウンドで60億ドル(約9,400億円)を調達し、メタやOpenAI、グーグルなどとの競争に向けて、優秀な人材を引き寄せようとする中で勃発しました。

2人の口論に野次馬の1人として割り込んだグーグルのソフトウェアエンジニアがルカンに対し、「君たちはケージファイト(金網マッチ)で決着をつける必要がある」とからかっているのですが、もちろんこれは昨年マスクがメタCEOのマーク・ザッカーバーグに格闘技での対戦を提案したことにちなんでいます。

世界を席巻する起業家でもあり世界一の大富豪でもあるイーロン・マスクと、AIのゴッドファーザーとも言われ世界のAI研究者やAI技術者たちの尊敬を集める科学者のヤン・ルカンが、まるで子供の喧嘩のようなことをしているのが面白く、いい大人が、恥ずかしげもなく公然とこのような負けず嫌いなところを剥き出しにするのも、米国のエネルギーの源だと感じた次第です。

※本記事は有料メルマガ『『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』~時代の本質を知る力を身につけよう~ 』2024年6月7日号の一部抜粋です。このつづきに興味をお持ちの方はぜひご登録ください。

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辻野 晃一郎(つじの・こういちろう):福岡県生まれ新潟県育ち。84年に慶応義塾大学大学院工学研究科を修了しソニーに入社。88年にカリフォルニア工科大学大学院電気工学科を修了。VAIO、デジタルTV、ホームビデオ、パーソナルオーディオ等の事業責任者やカンパニープレジデントを歴任した後、2006年3月にソニーを退社。翌年、グーグルに入社し、グーグル日本法人代表取締役社長を務める。2010年4月にグーグルを退社しアレックス株式会社を創業。現在、同社代表取締役社長。また、2022年6月よりSMBC日興証券社外取締役。

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【著者】 辻野晃一郎 【月額】 ¥880/月(税込) 【発行周期】 毎週 金曜日 発行

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