「大企業経営者100人の7割が原発再稼働に賛成」このタイミングで日経新聞が1面トップに“政権ヨイショ記事”を据えた意味

 

メディアを使って「世論誘導」を行う権力の常

岸田政権になってからは、その動きが一層露骨になり、原子力規制委員会の事務局である原子力規制庁の長官、次長、原子力規制技監のトップ3全員が経済産業省出身者で占められるようになりました。規制する側が推進する側と一体化したわけです。また、「原則40年、最長60年」と定められていた原発の寿命についても、停止期間を除外するなどの措置で実質的には引き延ばされました。老朽化が懸念される中、これも安全面からは大きなリスクです。3.11以降、一時停止が続いていた既存原発も、既に12基が再稼働しています。さらに、原発の新増設についても積極推進する方針が打ち出されています。

ですから、この記事から私がまず感じたことの一つ目は、そのような政府のエネルギー政策を日経新聞も後押ししている、ということです。権力はメディアを使って世論誘導を行いますから、これもその手の記事の一つだと受け止めました。タイミングとしては、夏の猛暑を控えて電力需要が高まる時期です。電気料金の高騰を気にする国民にとって、やはり電力の安定供給やコスト抑制のためには原発が必要なのだ、というムードを作る好機ですから、この時期を選んだのだと思います。

日本の名だたる大企業経営者100人(前述の通り実際は144社)のアンケート結果として報道する、というやり方も、単なる日経新聞の社説や論説などで後押しするよりも、より客観性のある記事として読者に対する説得力を持たせる効果があると思います。しかし、ここには盲点があります。記事(「原発新増設、経営トップ過半が支持 再エネ目標上げ8割」)のアンケート結果からもわかるように、「既存原発の再稼働」については20%強の人たち、「原発新増設」については40%程度の人たちが、正直に「わからない」と答えています。実際、エネルギーや原発の問題は複雑で、大企業の経営者といえども、専門知識を持つ人たちは限られていると思います。

たとえば、原発はよく「ベースロード電源」などと呼ばれますが、そもそも電源は「ベースロード電源」「ミドル電源」「ピーク電源」の3種に区分けされています。従来の原発や、石炭火力、水力による電力は「ベースロード電源」に区分けされていて、需要変動によるこまめな調整は出来ません。現在、多くの原発が停止している日本の現状では、石炭火力によるものが総電力の30%程度になっていますが、世界の脱炭素の流れからは、ここが主に問題視されている点になります。

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