石丸伸二氏が奪った“無党派層取り込み”の役割。証明された維新と国民民主という「第三極系の政党」の終焉

2024.07.11
 

東京で存在感を示せず衆院選に不安残す結果となった維新

まず野党第2党の日本維新の会だ。小池氏が都知事選への出馬を正式表明した6月12日、維新は都知事選への独自候補断念を決めた。近畿以外に党の足場を十分に築けていない維新にとって、単独で選挙を戦い「惨敗」を印象づけるのは得策ではないと考えたのだろう。

維新は他候補に「乗る」ことで恩を売る選択肢も取れなかった。例えば小池氏。東京選出の参院議員でもある同党の音喜多駿政調会長は、小池氏が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」から離党した経緯があり、小池氏に「乗る」ことは極めて想定しにくい。そもそも、自民党の「ステルス支援」の方針がすでに明らかになっていた小池氏を支援すれば、維新は完全に「第2自民党」「自公維」という立ち位置となり、衆院選にも影響を及ぼしかねない。

では「野党統一候補」で戦えるかと言えば、それはもっと難しい。野党側の候補は野党第1党・立憲民主党の「党の顔」だった蓮舫氏だ。「立憲から野党第1党の座を奪う」ことをうたってきた維新にとって、蓮舫氏を「応援する側」に回れば、その大前提が崩れてしまう。

それなら「与党でも野党でもない完全無所属」の石丸伸二・前広島県安芸高田市長を推す形はどうだろう。正直、筆者はこの可能性はあり得るかと感じていた。大阪で議会を敵に回して叩くことでのし上がってきた維新にとって、石丸氏の安芸高田市での振る舞いは、妙に親和性が高く見えるからだ。

しかし、それは実現しなかった。音喜多氏は選挙後の7月8日になって、BSフジの番組で「選挙前に支援をお願いされた」ことを明かした。維新側が支援の条件として「政策協定を結んで推薦を取ってもらう」ことを望み、折り合わなかったという。

実現しなかった事前の交渉を公にされるのは石丸氏側もたまったものではないだろうが、思えばこの政党は、政治資金規正法改正案をめぐる自民党との合意の経緯を、馬場伸幸代表自身が暴露してしまったこともあるし、これがお家芸なのかもしれない。

結果として維新は、都知事選への「静観」を決める。自主投票ではない。「動くな」ということだ。この方針は「都知事選に関与しない」ことへの地方議員の反発を招き、ついには離党者まで出してしまった。

このように地方議員に動揺が走っている状態では、選挙をまっとうに戦うのは難しい。維新は都知事選の「不戦敗」だけでなく、都議補選では擁立した2人の候補がともに敗退した。野党第1党となるために不可欠な全国政党化、特に首都・東京で存在感を示す機会を失い、維新は衆院選に大きな不安を残す結果となった。

維新以上にどこにもなかった国民民主党の存在感

ついでにもう一つの第三極、国民民主党に軽く触れておく。同党は東京都連レベルで小池氏を支持すると決めた。支持団体の連合東京が小池氏の支持を決めていること、4月の衆院東京15区補選で小池氏が推す無所属候補をともに推薦しているので、当然と言えば当然だ。

しかし、都知事選での同党の存在感は、維新以上にどこにもなかった。自民党の支援を得ることに成功した小池氏にとって、もはや同党はさほど重要な存在ではなかったのだろう。都議補選にも候補者はいない。玉木雄一郎代表は選挙戦期間中に、実業家の堀江貴文氏のYouTubeチャンネルで、競馬か何かのように都知事選の得票を予想しまくっていた。

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