石丸氏に取った変わられた「第三極」としての役割
こうした「第三極」的な存在は、国政の2大政治勢力(現在なら自民党と立憲民主党)に飽き足らない無党派層の支持を吸い上げ、時にはそこから政治の新しい姿を映し出すこともあった。しかし今回、彼らの役割は、広島から突然現れた石丸氏に取って代わられた。
ちなみに、NHKの出口調査によれば、石丸氏に接近したという維新の支持層の票が最も多く流れたのは小池氏で、小池氏を推していた国民民主党の支持層の票が最も多く流れたのは石丸氏だったという。わけが分からない。
「第三極」としての両党は、そろそろ本格的に存在意義を失うのではないか。すでに2度の分裂を経験している国民民主党に続き、維新にも「与党寄り」「野党寄り」の路線の違いや「大阪組」「非大阪組」など、さまざまなミシン目が入り始めている。次の衆院選を乗り切れても、来年の大阪万博を機に、党のありようは大きく変質することになるのではないか。
「2大政党は古い」といい「既存の政党は時代遅れ」という。有権者には一見新しく、気持ちよく見えるかもしれない。しかし、このやり口はもう、平成に入った頃から30年、掃いて捨てるほど続いてきた。
「新しさ」だけを主張し、自分の立ち位置を明らかにすることなく与党と野党の立場を都合良く使い分けて政界を遊泳するような政党や政治家は、これまでもこの世界で長続きはしなかったし、両党もその流れの中にいる、ということなのだろう。
石丸氏により「第三極の世代交代」はなされるのか
さて、これで石丸氏がこの勢いのまま国政進出に向けて新党でも結成すれば、それは「第三極の世代交代」ということになるのだろう。だが、現時点でその可能性は小さそうだ。
石丸氏は都知事選の敗北直後、衆院広島1区からの出馬に関心を示して聞く者をあ然とさせたが、どこかの大政党に所属して「候補者の1人」におさまることを望むようには見えない。おそらく石丸氏は、政党組織を作って育てる発想を持っていない、究極の「自分ファースト」の政治家だ。1人でトップになれる首長選を好むか、さもなければ既存の国政政党に、党首として迎えられるよう売り込むか、そういうタイプなのではないだろうか。
少なくとも、おそらく次の都知事選に石丸氏はいないだろう。その時には第二、第三の石丸氏のような存在が、第三極的ポジションに彗星の如く現れ、一過性のブームを起こして去って行くのだろうか。筆者はもう、そんな「古いやり口」に飽きているのだが。

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