【国債市場が激変】10年国債入札ショックは歴史的な債券暴落時と酷似

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2003年以来の急落

この結果が意味するものは何か。これはプライマリー・ディーラーを主体に業者がかなり慎重になっていたためと思われる。投資家のニーズうんぬんよりは、業者の体力が落ちてきたことがうかがえる。いわゆるリスク許容度の低下である。業者は念のため、下のほうの価格でも応札している。その入ると思っていなかったところまで入ってしまい、何が起きたのかとびっくりしたのである。

手元のデータによるとテールの45銭というのは2003年7月入札時、つまりVARショックと呼ばれた債券相場急落の際の90銭以来となる。テールが40銭以上流れたのは2004年3月の42銭以来となる。

今回、あのVARショックが連想されたとしてもおかしくはない。そもそもVARショックとは日銀の量的緩和を背景にじりじりと買い進まれ、当時の10年債利回りが過去最低をつけ、その反動による国債の急落であった。このきっかけのひとつが10年ではなく、20年国債の入札において、利率が0.8%とはじめて1.0%を割り込み、1%割れの国債は買わないとした生保などの声が報じられたのが相場反落のきっかけとなった。今回も1月に20年債の利回りが1%割れとなっていたばかりか、5年債利回りもマイナスとなり、10年債は一時0.2%を割っていた。

ある意味、高値警戒がここにきて出てきていたことも確かであるが、今回、気をつけるべきは国債市場で大きな役割を占めるプライマリー・ディーラーのリスク許容度の低下となる。つまり、国債入札で落とした国債を日銀に売却するまでの期間での相場変動に耐えられなくなりつつあるということになる。

わずかな期間でもその間に相場が大きく下落すれば、損失額は大きくなる。当然ながらその損失を日銀に補填してもらうわけにはいかない。国内の投資家もマイナスの利回りの国債など常識的には買えない。担保需要など限られた要因でなければ、買える投資家はほとんど存在しない。しかし、相場がそれほど変動しなければ日銀が時価で買ってくれる。だから業者も安心して国債を落札できた。しかし、相場の変動幅が大きくなり、その構図が大きく崩れつつある。それを示したのが、今回の10年国債入札ショックと言える。

 

『牛さん熊さんの本日の債券』より一部抜粋

著者/牛熊
1958年、神奈川県生まれ。慶応義塾大学法学部卒。証券会社の債券部で14年間、債券ディーリング業務に従事する傍ら、1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。
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