一方でトランプ前大統領に危うさを感じる人は、この1枚の写真が扇動につながる時に、前回の米大統領選挙で選挙結果に不満を持つトランプ前大統領支持者による連邦議会襲撃事件を思い起こす人もいるだろう。暴力と自由が混在する中で、1枚の写真は負の歴史を浄化していく魔力があるようだ。
共和党のトランプ支持者には、銃撃戦を生き抜いた最高のドラマが展開されている感動の連続の場面ではある。とはいえ、米国は民主と共和のバランスの中で成り立っている。連邦国家として、拮抗した選挙戦のもとに、政策論争を展開し、民主主義の手本を見せてほしいと思う。
銃撃後の1枚写真は、傷だらけでも立ち上がるブルース・ウイルス演じるニューヨーク市警の刑事ジョン・マクレーンならまだいい。むしろ、ダイハードを引用するならば、演出として受け入れることは出来るかもしれない。
しかし、銃撃後、共和党によるネガティブキャンペーンは聞くに堪えない言葉が展開されている。対立候補への誹謗中傷、下品な蔑み言葉の数々にうんざりする中で、銃撃により、そのネガティブキャンペーン劇場は変化するのだろうか。罵り合いが続くのであれば、米国のメディア利用は決して見本にはならないだろう。
日本の多くの人が未だに米国は憧れの国で、「あってほしい姿」が心に居座り続けている。私も高校3年生の時に初めて訪れた真夏のカルフォルニアォルニアの青い空、多様な民族が一緒に暮らす大らかさ、が憧れの国の姿だ。分断でもなく、罵詈雑言でもない、光り輝く米国。
米大リーグで活躍する日本選手を見て、私たちはその夢舞台での活躍を祝福するのは、憧れの国への憧憬があるからで、私たちはそのストーリーの続きを期待している。ワクワクする何かを米国に求めている。だからこそ、米国は気になるのだ。
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image by: ● エヴァン・ヴッチ(米AP通信チーフカメラマン)公式X(旧Twitter)









