周辺国にとって完全なる「今そこにある危機」となった中ロ
主要核保有国であるロシアが2022年2月24日に隣国ウクライナに侵攻したという事態は、核兵器の存在が戦争の抑止という当初の目的から、相手に自国のエゴを押し付けるための恐怖の根源として作用する事態に変化し、一気に欧州および中央アジア地域の安全保障環境を緊張させることになりました。
ロシアによるウクライナ侵攻において、欧州各国が思い切って厳しい対応を取れない一つの心理的な理由は、ロシアが地理的に陸続きであり、多くの欧州諸国がロシアおよびベラルーシと国境を接する現実から、意図的か事故かの別なく、本当にロシア・ベラルーシがたとえ超小型・低出力の戦術核兵器であったとしても、核を使うような事態になれば、欧州各国は何らかの悪影響を被ることは避けられないとの認識がベースにあるからです。
以前にも触れましたが、ウクライナに対してロシアが核兵器を直接的に使用するかどうかはわかりませんが(自国への影響を考慮するとしづらい)、Pro-NATOの周辺国、特にバルト三国を恐怖に陥れ、国内での混乱を引き起こす起爆装置としての核使用はあり得ないシナリオとは言えないという分析が多数あるため、あまりロシアを過剰に刺激したくないという、見えない恐怖に基づく反応が、欧州各国に共通して存在します。
もちろん恐怖の度合いはロシアに近いほど大きく、フランスやドイツ、英国などの西欧諸国にとっては、ドイツを除けば自らも核保有国であるうえに、ロシアによる安易な攻撃を受けづらいという地の利からあまり実害はないと考えられますが、ポーランドやバルト三国、モルドバやハンガリー、ルーマニアなどの東欧諸国にとうっては、まさに“今そこにある危機”の典型例と言えるでしょう。
同様のことは北東アジア地域に位置する日本や韓国、東南アジアからオセアニアに属する国々にとっても言えます。
中国の核兵器能力が格段に上がり、着実に核兵器大国になるための階段を急速で上がっている現状は、実際に中国が核兵器をアジア諸国に用いることはないと考えるものの、常にそこに存在する安全保障上の脅威であり、中国に対して敵対的な威嚇を行うことを躊躇わせるに十分な状況を作り出しています。
そこにロシアの助力を受けて急速に核弾頭の小型化に成功し、核兵器運搬能力である弾道ミサイルの性能も格段に上がっている状況は、北朝鮮を過激な行動に走らせる危険性をはらんでいます。
中国政府は決して北朝鮮の核開発を良く思っていないという状況に鑑みると、もし核兵器を盾に中国に楯突くような態度を取るようになると、中国が核兵器を使用することはないと思われますが、北朝鮮の核能力を国家安全保障上の危機として攻撃して破壊するようなシナリオは十分に考えられます。
そのような事態が生じる場合、ロシアはどう出てくるでしょうか?
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