私たちは自分の意志で未来を切り開いていると思っていますが、実は意志などなく「未来は決まっている」と語る本があります。無料メルマガ『毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン』著者・土井英司さんがこの内容をただのトンデモ論だとしない理由とは?
【真理か?トンデモ論か?】⇒『未来は決まっており、自分の意志など存在しない。』
『未来は決まっており、自分の意志など存在しない。』妹尾武治・著 光文社
こんにちは、土井英司です。
本日ご紹介する一冊は、九州大学大学院芸術工学研究院准教授、東京大学IML特任研究員で、知覚心理学を専門とする著者が、「心理学的決定論」として、持論を展開した一冊。
著者は、われわれ現代人が盲目に信じる「意志」の力を否定し、
人間の行動は事前に決まっており、環境、世界がそれを決定する
という論を主張しています。
一見トンデモ本なのですが、よくよく読むと、そうとばかりは言っていられないことがよくわかります。
著者が専門とする知覚心理学(その中でも視覚心理学)では、刺激の物理的な量を増やしたり、減らしたりすることで人間の行動のパターンがどう変わるのかを明らかにするようですが、その見地からは、こんなことが言えるようです。
我々は自分の行動を自由に選択していると誤解している。しかし、その行動の選択は、知覚という段階で得られた情報処理からの結論に縛られている
つまり、われわれは外界つまり環境から得られる刺激に対して、反応を繰り返しているだけであり、それゆえに、「未来は決まっている」ことになるのです。
本書では、このことを裏付ける実験結果が紹介されており、そこからは、人生やキャリア、仕事における重要な示唆が得られると思います。
人間には、Free Will(自由意志)はないけれど、Free Won’t(自由否定)はあるとしたリベットの説、意識よりも勘が早く、勘よりも行動が早く、行動よりも精神性発汗が早いという事実からは、意思決定のヒントが得られると思います。
個人的に一番参考になったのは、
意識とは情報であり、生命とはその情報を増やすために配置された「なにがしか」(存在)である
という、著者の持論。これは、生きる指針の一つになり得ると思いました。
他にも、われわれの意識の正体が情報であり、それゆえに脳以外に移植できる可能性があること、ゆえに映画「アバター」のような世界が実現できる可能性があることも指摘しており、科学の可能性を考える上で、参考になる内容だと思いました。