東日本大震災の直前にも“どうでもいいニュース”が連発
東日本大震災(2011年3月11日)の直前には、さらにわかりやすく“どうでもいいニュース”が立て続けに話題になったという。先の編集者が説明する。
「この頃の人々の関心の中心は、地震発生の約3ヶ月前、2010年11月25日に発生した市川海老蔵暴行事件でしたが、これは『関東連合』の実態を含めて世の関心を集めたものなので“どうでもいいニュース”とは言えないかもしれません。ただ、そんな中で、年明け早々に決定的な出来事が起こります。それがバードカフェのスカスカおせち事件でした。人の生命を左右するような重大事件ではなく、要は『おせちの見本と実物があまりに違いすぎる』という騒動でしたが、当時はすでにSNSが普及しておりネットで大炎上。事件の重大性と炎上度合いが少々アンバランスという点では、今回の体臭騒動とも似た面があるのではないでしょうか」(前同)
この時期には、タイガーマスクの主人公「伊達直人」を名乗る謎の人物による寄付行為もSNSで話題に。2月には八百長問題の影響で大相撲春場所の開催中止が決まったほか、AV女優の小向美奈子が覚醒剤で“2度目逮捕”という話題もあった。いずれもリアルタイムでは“注目ニュース”の印象だったが、たしかに今となっては“どうでもいいニュース”という印象は拭えない。
そんな空気感の中で、東北地方を中心とする東日本各地をマグニチュード9の揺れと巨大津波が襲った。それまでSNSでは「大学入試問題 Yahoo!知恵袋投稿事件」なども大いに議論されていたが、地震後は各地の被害状況や計画停電、原発に関する話題で一色に。これはあくまで記者の個人的印象だが、東日本大震災の直前にいったい自分が何を考えていたのか、正確には思い出せない気もする。
認知バイアスの一種か?必要なのは地道な防災努力
そのほか、熊本地震(2016年4月14日・16日)の年には、1月に川谷絵音とベッキーの不倫(センテンススプリング事件)が話題に。2月に清原和博が覚醒剤で逮捕され、3月にはショーンKの学歴詐称が発覚。いずれもSNSで大いに議論を呼んだ。
また直近の能登半島地震(2024年1月1日)では、前年2023年が1年を通して寿司テロ(外食テロ)ブーム。「私人逮捕系Youtuber」や「頂き女子りりちゃん」といったニュースも、後年の人々は“どうでもいい話題”だったと判断するかもしれない。
さて、駆け足で「大震災の前には“どうでもいい事件”が注目される」説の真偽を追ってきたが、こうしてみると、たしかにこの説は信頼度が高い印象がある。やはり今回の体臭騒動は、きたる南海トラフ巨大地震を警告しているのだろうか?
だが、このように法則が「当たっている」ように感じてしまうのは認知バイアスの一種ではないか、という指摘もある。別のネットメディア編集デスクが指摘する。
「世の中のモードを『平時』と『有事』にわけて考えた場合、いざ大きな地震が発生して甚大な被害が生じてしまった後ほど、私たちはそれによって失われた“当たり前”や“直前の日常”を強く思い出し、懐かしく感じてしまうのではないでしょうか。いわゆる『何でもないような事が幸せだったと思う』現象です。“くだらない話題”で喧々囂々の議論ができるのは平和の証。それがときにヌード写真集だったりAVだったり体臭問題だったりすると。私は今回の説をそんなふうに解釈しています」(ネットメディア編集デスク)
読者はどう感じるだろうか。今回ご紹介した説は、“前兆”や“法則”と言えるかどうかはさておき、「大地震はいつなんどき起こるかわからない」ことを思い出させてくれる。もし被災して断水すれば長期間入浴できなくなり、それこそ「男が臭い、女が臭い」などとは言っていられなくなるだろう。やはり私たち一人一人が日常的な防災意識を高めていく必要がありそうだ。
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image by: ETOPO1, Global Relief Model / public domain









