自民総裁選後の日本に2つの選択肢。自国連立政権で玉木雄一郎「新総理」誕生か、枝野幸男内閣成立か?10月解散風もう止まず

 

政界再編の可能性~ダイナミックな動きは想定しにくいが不確定要素も

さて、現在の政局の中心にある問題は、何と言っても自民党の裏金問題です。このように「政治とカネ」で問題がここまで深刻になったのは、20世紀末にはまずロッキード事件(1976年)があり、その際には保守新党として新自由クラブが登場しました。更にリクルート事件(1988年)の際には、自民党から離党者がどんどん出て、最終的には細川政権の発足に至りました。

特にこの細川政権というのは、既成政党の公明民社と社会党に加えて、小沢グループ(旧田中派)、日本新党、さきがけ(武村正義など)といった保守系の「脱自民党」のグループが参加していって大きな勢力になったわけです。

ちなみに小沢グループというのは、小沢一郎、奥田敬和、渡部恒三、羽田孜といった元田中派、元竹下派の政治家で「竹下派7奉行」に数えられていた面々が先導していました。彼らがどうして離党に踏み切ったのかというと、彼らは金丸信に近く、そのために小渕、梶山、橋本の3人衆と仲が悪かったという理由もあったようです。

それはともかく、今回の自民党の窮地は「ロッキード」「リクルート」に匹敵する状況です。だったら、思い切って自民党を捨てて新党を立ち上げるような決断をする議員がいてもおかしくないわけです。それはギャンブルかもしれませんが、そのまま何もしないと選挙に落ちてしまいます。これを避けるためには離党して「自分は自民党ではない」という「看板の掛け替え」をするのは合理的です。

そうなのですが、今回はそのような動きは限定的です。理由は極めて具体的なものです。まず、衆院の多くは小選挙区です。その場合は自民党の現職は野党と対決して勝っています。前回負けた相手は同じ候補者であろうと、新人であろうと「今度こそスキャンダルまみれの自民党の議席を奪おう」と必死です。そんな中で、離党して無所属になっても、あるいは旧自民党系で新党を立ち上げても「悪しき元自民党の候補」というイメージは消せません。

昔は、特に細川政権発足までの選挙は中選挙区でしたから、同じ選挙区に自民系と離党組がいれば、離党組はスキャンダルのイメージのついた自民系から票を奪うことは可能でした。ですが、現在はそうした効果はないということになります。

また、今は政党を軸とした公営選挙ですが、その政党交付金は1月に出るようになっています。また、直近の国政選挙の結果でカネは計算されます。ですから、この夏に新政党を立ち上げても10月に総選挙があっても、交付金は出ません。あるいは来年の7月でも9月でも、その場合は25年の1月時点で政党はあっても、国政選挙での集票の成果はないのでやはり出ないわけです。ということは、急いで新党を立ち上げても既成政党には敵いません

ただ、仮に総裁選の動向で自分たちが不利となった場合には、裏金問題が軽微である旧茂木派と旧岸田派の場合は、少し違います。例えば議席を死守するために中道政党(国民民主など)に走って小選挙区で勝ち抜くという選択はあると思います。勿論、これは選挙区事情によります。

もう一つは、維新の問題で、万博でここまでケチをつけてしまった中では、東京維新が逃げる可能性というのはあると思います。どのような格好になるかは分かりませんが、維新が分裂してミニ再編になるということです。そうではあるのですが、20世紀の状況とは違って、政界再編で新政権というようなダイナミックな動きとなる可能性は低くなっています。

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