KDDIは自社が保有する位置情報データやサービス利用状況と、顧客が保有する売上や会員情報などを組み合わせてさまざまなデータを提供。効率的な店舗運営を可能にするサービスを開始しました。このサービスに、KDDIが経営に参画したローソンのデータを融合させれば他にない強みとなると考えるのは、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんです。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では、セブン&アイが買収提案を受けた話題にも触れ、リテールテックの効果的な利用によって、日本のコンビニの評価はまだまだ高くなると伝えています。
KDDIがユーザーデータを活用した小売店向け支援ツールを公開──ローソンはリテールテックで、セブンイレブンに勝つ日が来るか
KDDIは「WAKONX Retail」として、小売店などに向けた店舗開発支援、売上げ予測支援、マーケティング活用、在庫可視化・最適化、品揃え最適化などのパックを提供すると発表した。KDDIではauユーザーのGPSや全国の基地局通信情報などから、いつ、どこにユーザーがいたかなどのデータを最大2000万ユーザー分、取得が可能だという。
さらに、au PAYやスマートパス、ブックパス、うたパス、ニュースパスなどのサービスからユーザーの趣味嗜好を推定できる。こうしたKDDIの有する1stpartyデータと、顧客の保有する会員や商品、売上げデータを組み合わせることで、データの統合、分析、可視化を実現し、売上げ予測や店舗開発業務支援に繋げるという。
このオンライン会見に参加した際、すぐに想像が膨らんだのが「ローソンが持つデータとの融合」だ。ローソンという、全国に店があるコンビニチェーンに来る客、売上げデータなどと、KDDIが持つデータ、さらに顧客が持つデータを組み合わせたら、他社にはないデータ分析ができるような気がする。
そのあたり、質疑応答で聞いてみたが「ローソンがKDDIのデータを使うことは考えられる、その逆はまだこれから」といった感じであった。
今週、コンビニエンスストアチェーン「セブンイレブン」の親会社、セブン&アイ・ホールディングスがカナダの同業大手であるアリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けたと報道があった。まさにKDDIは、これからカナダの同業大手と、日本のコンビニ市場で戦うことになるかも知れないのだ。
ただ、仮に買収が成立したとしても、日本におけるセブンイレブンの魅力が上がるかと言えばかなり微妙と言えそうだ。日本のノウハウが世界に展開する可能性はあるが、世界のノウハウが日本で役立つとは思えない。
先日、グーグルの発表会で高橋誠社長を取材した際、「KDDIがローソンを買収した件について、グーグルが強い関心を示した。アメリカはリテールテックがかなり進んでいる。ウォルマートがリテールテックで変化するなど、様々なソリューションがあり、ローソンでも使えるかも知れない」と話していたのが印象的であった。
ということは、KDDIがローソンで上手いことリテールテックで成功すると、そのノウハウやソリューションは海外でも展開可能ということになるかもしれない。コンビニ最大手のセブンイレブンが外資の手に渡る可能性が出てきたことで、日本のコンビニが世界で改めて評価される日も近そうだ。
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