なぜ、このタイミングで改装?IKEA渋谷店が見せつけた「プレゼン力」の正体

 

★リニューアルした渋谷店が目指すプレゼンとは

美しいデザインの商品が並ぶ憧れの住まいを巧みにプレゼンするIKEA。

渋谷店が「郊外型のミニチュア店舗」へとプレゼン戦略を変更したのはいわば、IKEAの得意技である「共感戦略」をより身近な都市型店舗で実施するためではないだろうか。

さらに広く多くの人にIKEAの魅力を実感してもらいたい。そして共感し、IKEAを通して、理想の住まいと人生を手にしてもらいたい。

そんなメッセージがあるように思われる。

この裏には、もっと実利的なものも当然ある。

それはおそらく、小物を販売するお土産店としての役割から脱却を図るためではないか。

つまり、本来の家具を売るお店として、いかに大型商品を購買してもらうか?に挑戦し始めたのだ。

というのも、IKEAで商品を買う方法は2通りあるためだ。

1つは、店舗で実際に購入する。もう1つは、オンライン購入。

オンライン販売はあらゆる業界で伸びているが、もともと店舗数自体は少ないIKEAにとってはオンライン販売は基本戦略である。

渋谷店におけるIKEAのブランド認知拡大およびお土産屋さん的店舗の役割をある程度実施し終えた今、今後を見据えて、いわゆる本当の、ショールーム機能を強めて本来の「家具のオンライン販売」に舵を切ったのだ。おそらく。

これは、一応のヘビーユーザーである私のようなファンには、実はドンピシャに当てはまる戦略である。

というのも、IKEAで商品を買う前、私のようなファンは、しっかりと買うかどうかを見極めるからだ。

私の場合、IKEA商品に興味を持ったら、まずはHPを見る。

そして、欲しい家具があれば、まず都市型店舗を散策する。

そこには欲しい家具がたまたま並んでいることもあるし、ないことも多い。

次に、できればもっと商品を実感したいと考え、土日に大型郊外店舗まで出向いて実物を確認する。

そこで欲しい商品に出会っても、店舗では買わない。

家に戻り、本当にその商品でよいのかどうか、思いを巡らす。

家具を買うのだからそのくらい慎重になって良い。

大型店舗から帰宅し、またHPで検討し、何らかのタイミングが来ると、WEB注文する。

このような私の購買行動は、なんと、確実に「AIDMA」のステップを踏んでいる。

Attention(注意):商品やサービスについて知る

Interest(関心):商品に興味を持つ

Desire(欲求):商品を欲しいと思う

Memory(記憶):商品を思い出す

Action(行動):商品を買う

IKEAのHPを何度も見て「A、I、D」を繰り返す。さらに実店舗でも「M」あるいは「A、I、D」に戻る。最後の「A 行動」に至るまで、なんどもステップを踏んでいる。

私の例は少々極端かもしれないが、似たようなAIDMAステップを踏んでいる人は少なくないだろう。

何事も、第一歩を踏み出せるかどうか、が成否を握る。

となると、IKEA商品を見聞きしたことがあっても、なかなか実物に触れることができないのであれば、AIDMAのステップは先に進まない。

しかし、気楽に都市型店舗でリアル商品体験できるとあれば、購買意欲は確実に高まり、実購買も増える。

美しいデザインの商品が並ぶ憧れの住まいを巧みにプレゼンするIKEAが、インターネットとリアルの両方の媒体を使って消費者の購買を掘り起こそうとし、渋谷店を「郊外型のミニチュア店舗」へとプレゼン戦略を変更した理由の1つの狙いは、おそらく、ここにあるのではないだろうか。

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