9.11でWTCから生還した日本人金融マンが語る「紙一重の脱出劇」日本も他人事ではないテロ・災害避難の教訓として

 

臨機応変な危機対応と民間ボランティアの力、わが国も教訓に

慣れない地で避難を続ける中で助かったのは、危機時の臨機応変の対応でした。南棟前から走って逃げる際、ビルに入れといわれ、近くの見ず知らずのアパートに入れてもらいましたが、ほかの避難者とともに受け入れてくれました。ジムからタオルに水を浸して鼻に充てるよう、皆に配ってくれました。

スタッテン島には宿泊施設がないというので、コミューター電車に乗ってジャージーシティに向かいましたが、駅まで警察の犯人護送車のようないかつい車で送ってもらい、電車も切符を買わずに乗せてもらいました。

ジャージーシティではホテルが取れず、宿を探していると、教会が声をかけてくれましたが、避難民グループが日本人、欧州人、南米人とバラバラのため、キリスト教の教会はパスしました。結局、消防署で休ませてもらい、そこで宿の手配をしてもらった人、さらに近くの高校で泊まれると聞いてまたバスのようなもので送ってもらった人もいました。翌日ペンステーションまでの電車も無料で乗れるなど、臨機応変な危機対応に助けられました。

避難している間、日本の領事館を含め「日本」の存在は全く感じられませんでした。避難する先々でボランティアの人々がコーヒー、コーラにスナックなど軽食を用意してくれていて、消防署でもピザとコーヒーをいただきました。一晩過ごした高校ではプールで使うデッキチェアをベッド代わりに、あと毛布と避難袋をもらいました。中にはタオルと石鹸、聖書が入っていました。

とにかく、親切なニューヨーカーと現地のボランティアの人々に助けてもらい、なんとか帰国できました。

* * * * * *

あれから23年。観光やビジネスで日本に来ている日本語の不自由な外国人が、突然大災害にあう可能性はあります。特に一人で来ている人は不安がいっぱいのはず。彼らを不安にさせずにNYで私が受けたような支援をしてあげられるか、日本人の心意気が試されます。

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image by: Michael Foran, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

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プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

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