岸田前総理の名誉欲を読み誤った、高市氏と麻生氏
旧岸田派から出馬した林芳正官房長官と上川陽子外相はいずれも決選投票には進めず、旧岸田派の票がキャスティングボートを握る状況が生まれた。直前まで仲間と協議していた首相は、「高市さんでは政策が合わない」と周囲に語り、決選投票に残る可能性が高かった石破氏か小泉氏のいずれかに投票するよう伝達したという。(9月28日朝日新聞朝刊)
これにより、林、上川両陣営に集まった国会議員票は決選投票で石破氏に流れることになった。まさに派閥パワー全開である。高市氏は政治信条の異なる岸田首相に対し、つねに冷ややかな視線を向けてきた。岸田首相にとっては気にくわないヤツなのだ。
筆者はこれまで当メルマガにおいて、「総裁選ショー」のプロデューサーの一人として森山裕総務会長(現幹事長)の名を挙げてきた。だが、森山氏に全体的な方向性を示したのは岸田首相ではなかっただろうか。
岸田首相は歴史に名をとどめたいという思いが強い。麻生太郎副総裁(当時)の猛反対を押し切って、「派閥解消」へ動き、安倍派の解体にこぎつけたのは、これまで自分にたえずプレッシャーをかけ続けてきた存在への破壊衝動もあっただろうが、「党改革の先鞭をつけた宰相」の名誉に浴したい気持ちに駆られた面が強かったからに違いない。
そのために党内から反発を受け、総裁選出馬を断念することにもつながった。だからといって総裁選を党に任せっきりにしないのが岸田流だ。総裁選で党の刷新姿勢を打ち出し、自分が言い出した「派閥解消」の意味を高めたい。そう考えたに違いない。
「派閥なき総裁選」は格好のフレーズだった。閣議で大臣たちに向けて多数の出馬を促したのは岸田首相だ。むろん、当初のシナリオは変更を余儀なくされた。“刷新感”の主役として小泉進次郎氏に期待したのだが、論戦力不足は隠しようもなく、人気が急落した。その代役として岸田氏や森山氏が目をつけたのが石破氏だった。
つまるところ今回の総裁選も、派閥領袖の好悪の感情や、権力への思惑が議員票を動かし、勝敗を左右するという点において、従来と基本的には変わりなかった。









