わざわざ休日に投票所まで足を運び、行列に並んで、投票用紙に手書きで候補者や政党の名前を記入する――なぜ日本の選挙はこんなにも「面倒くさい」しくみになっているのでしょうか。期日前投票という手はあるものの、「昭和じゃあるまいし、自分のスマホやPCで投票させてよ!」というネットの声は高まるばかりです。でも、実はこの面倒くささこそが、あなたの大切な権利を守っていることをご存じですか?元衆議院議員でコメンテーター、政治評論家、実業家の杉村太蔵さんは「未来永劫、今の方法がベスト」と断言。選挙のインターネット投票は、キャッシュレス決済の何倍も難しいと指摘します。(メルマガ『杉村太蔵メールマガジン ~タイゾーの投資家視点~』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです
プロフィール:杉村太蔵(すぎむら・たいぞう)
1979年8月13日、北海道旭川市出身。2005年9月第44回衆議院議員総選挙で最年少当選を果たし、厚生労働委員会、決算行政監視委員会に所属。労働問題を専門に、特にニート・フリーター問題など若年者雇用の環境改善に尽力。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科後期博士課程所定単位取得退学。現在、テレビ・ラジオ・雑誌などメディアで活動する一方、新規創業支援を中心とした新しいまちづくりを提唱し、2022年7月地元旭川市で「旭川はれて屋台村」を開業。2024年1月山口県下関市に「唐戸はれて横丁」を開業。2024年7月より、旭川平和通商店街振興組合理事長就任。
選挙でのインターネット投票、大変申し訳ないけど私は大反対なんです。そのワケについて
日本のデジタル化の遅れ、これはもう目を覆いたくなるほどです。私はね、キャッシュレスの推進には大賛成で、私が経営している「旭川はれて屋台村」も「唐戸はれて横丁」も、完全キャッシュレス化を目指してやってます。現金比率なんてもう1%もないんじゃないかな。ほとんどがキャッシュレス決済です。
そんな私が、こと「選挙におけるインターネット投票」に関しては、断固反対なんです。
これは皆さん、本当に申し訳ないんですが、多くの方が「選挙でインターネット投票できたら便利だなぁ」と思っているかもしれません。でもね、私は断言します。今の投票所に足を運んで、紙に名前を書いて1票を投じる、この方法がベストです。そして未来永劫、これがベストだと思っています。
なぜか?それはですね、私には選挙に出馬した経験があり、同時に落選した経験もあるからです。皆さん、選挙って何が一番重要だと思いますか?多くの方は「当選者を決めること」が重要だとお考えでしょう。それも正しい。でも、もっと重要なのは「落選した人がきちんと諦められること」なんですよ。
いつまでも「不正選挙だ!」では民主主義が崩壊する
例えば、トランプ前大統領が選挙に負けた時に「不正だ!」と言い出しましたよね。これ、際限がないんです。民主主義が安定しなくなる。選挙に負けた候補者が「自分の票は本当にそれだけなのか?」と疑い出したら、最終的には1票1票を数えるしかなくなる。それができるのが、現行の紙の投票なんです。
皆さん、もしインターネット投票が導入されたらどうなりますか?例えば、スマホやコンビニで投票できるようになったとしましょう。それで選挙結果が発表されて、自民党が単独過半数を獲得したら、もう野党支持者は「不正だ!」と叫ぶでしょう。絶対に納得しないと思います。想像つきますよね?
だから、選挙制度で一番大切なのは、落選した候補者やその支持者が、最終的に「仕方ない、負けたんだ」と納得できることなんです。いつまでも「不正だ!」って言ってたら、民主主義は崩壊しますよ。でも今の紙の投票なら、疑っている人に「じゃあ1枚1枚数えてみてください」と突きつけることができる。それが非常に重要なんです。
ですので、私は今の日本の選挙制度、特に投票方法は世界でトップクラスだと思っています。日本ほど選挙制度が確立されていて、不正が起こりにくい国は他にありませんよ。ロシアみたいに選挙管理委員が買収されてるなんて話、聞くじゃないですか?でも日本は違うんです。選挙管理委員会への信頼も高いですし、不正がほとんど起きない仕組みがしっかり整っています。
だからこそ、私はインターネット投票には反対なんです。現状では、投票所に行って紙に書いて投じる、このシンプルな方法が最も信頼できる。そしてこれが、日本の民主主義を支えているんだと思います。皆さんはどうお考えでしょうか?