高市早苗を担いで反撃開始か?“黒幕”気取りの麻生太郎が「石破下ろし」に打って出るタイミング

 

(1)自民党の敗因は石破の右往左往の無様さ

現象論のレベルで言うと、石破の、

  1. 安倍政治に批判的であるが故に長く党内野党に甘んじてきた経歴、
  2. あの渋味の風貌で低く落ち着いた声で語ることによって醸し出される一見すると考え深そうな人柄、
  3. それらを掛け合わせれば安倍の亜流でしかない菅義偉・岸田文雄両政権とは違った政権運営を見せてくれそうな雰囲気、

――といったものは、結局、全くの幻想にすぎなかった。彼の「反安倍」は意外にも骨筋が通らない口先だけのもので、その裏にはさして深い考えがあるわけでもないのでコロコロ言うことが変わるのも当たり前。情けないほどの無定見であることが早々に露呈してしまった。

私が「これはあんまりじゃないか」と耳を疑った、信じられないような例を1つだけ挙げれば、彼が所信表明などで繰り返した「デフレ脱却こそ最優先課題」という台詞である。

言うまでもなく「デフレ脱却」は11年前に始まった「アベノミクス」の当初からの中心スローガンであり、私に言わせればそれがそもそものボタンの掛け違えとなった大誤認なのだけれど、それをなぜ今時、石破が口にするのか。しかも時代は巡っていて、現に人々が困っているのは過度の円安を一因とする物価高であって、総理が言うとすれば「インフレ脱却こそ最優先課題」ということでなければおかしい。

前号でも引用したが、朝日新聞の原真人は10月19日付「多事奏論」欄でこう述べた。

▼デフレは物価下落が続くことで、そこから脱却するとは物価を上げることだ。この物価高の下でさらに物価をあげようとはかなり倒錯した問題意識である。

▼石破がこれを持ち出したのはやや意外だった。……7年前、日本記者クラブでの講演でアベノミクスや異次元金融緩和を批判していたからだ。「こんな政策をいつまでもできるわけがない」「おかしくないかと誰も言わない自民党は怖い。大東亜戦争の時がそうだった」とも。

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少なくともこのことで明らかになったのは、石破はアベノミクスの何が問題かを全く理解しておらず、誰が草稿を書いたのかは判らないが、「デフレ脱却こそ最優先課題」と渡された原稿に書いてあれば、その通りに読み上げて平気でいる程度の人物だということである。このことに象徴される無定見、それ故に誰かに言われればコロリひっくり返る発言の右往左往のみっともなさが、国民に見抜かれてしまった。

本質論のレベルで言うと、「安倍政治」の余りにも酷い害悪――お友達主義体質、アベノミクスの出鱈目、安倍流大軍拡の行き過ぎをクリーンアップすることは、日本国民のために必須であるのはもちろんのこと、自民党自身にとっても避けて通れないステップであるはずだが、石破にそれを担うだけの力量はなかったということである。

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