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(4)維新は大阪ローカル政党に戻った

維新が全国政党化する可能性については本誌は一貫して疑問視していて、その主な理由は、「大阪都」という主張が全く普遍性を持っておらず、大阪はそれでいいとしても神奈川や京都や兵庫や福岡も「都」になればいいのかとの問いに対する答えを用意していない大阪エゴ的な超ローカル性にある。そこをはっきりさせて全国的な国と地方の行政の形を絵解きするのでなければ、維新は全国政党にはなりようがない。

前回総選挙で東京はじめ関西以外でも議席を得、それをマスコミは「全国政党化」への進撃が始まったかに囃し立てたが、本誌はそれに批判的で、いずれむしろ大阪に立て篭もるしかなくなるのではないかと予測した。実際、今回選挙で起きたのはそれで、確かに大阪では全19区を支配する圧倒的強さを見せたものの、それは逆に同党が、関西万博をカジノ施設開設に繋げようという邪悪な構想でますます超大阪エゴに嵌まり込んでいることの裏返しにすぎない。

(5)立憲も国民も「中身」で勝負していない

立憲と国民民主は結果的には躍進したが、「中身」で勝負して勝ち上がってきたわけでなく、また本当に勝ってしまったらどんな政権を樹ててこの3~4年間に何と何を実現するのかの具体的なビジョンも示していないので、人々に希望を与えることにはならなかった。

「中身」とは、前号でも述べたように、安倍とその亜流の12年間を通じて溜まりに溜まって人々の足に絡みついて前進を阻んでいる汚泥のようなものを、徹底的に取り除いて次の時代に向かって踏み出せるようにすることであり、そのためには

  1. 裏金問題に象徴されるお友達同士で舐め合う陰鬱な政治体質の一掃、
  2. 出鱈目の限りを尽くして何の成果も上げずに終わった「アベノミクス」の総決算、
  3. 対米従属をさらに深化させつつ膨らんでいく大軍拡への歯止め

――という3分野で「脱安倍化」を追求することである。石破がそれをやれるならそれでよし、やれなければその時は「だから我々の出番でしょ」と言って野党が政権を預かってその課題をさらに先まで進めて行くのでなければならない。

ところが立憲の野田は、彼自身が菅義偉や岸田文雄と並ぶ「安倍亜流」であり、そのような中身の勝負で石破に立ち向かっていない。国民の玉木雄一郎も、その野田と、「保守中道路線」という名の自民への擦り寄りを競い合っているだけの安全野党にすぎず、だからこの選挙結果は誰をもワクワクさせることがないのである。

(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2024年10月30日号より一部抜粋・文中敬称略。ご興味をお持ちの方はご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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