プーチンから「お前は馬鹿か」と嘲笑されること必至。石破氏「アジア版NATO」構想で露呈したウクライナ問題の歴史的経緯を知らぬ新首相

th20241008
 

かねてから「軍事オタク」として知られてきた石破茂氏。そんな石破氏が首相就任直前、米シンクタンクに寄稿した論文が大きな話題となっています。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』ではジャーナリストの高野孟さんが、石破首相が論文内で主張する「アジア版NATO」構想について、「これが本当に防衛政策に強いと言われた政治家の言説か」と猛批判。その上で、論文内容がいかに誤謬に満ちたものであるかを詳細に解説しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:石破「アジア版NATO」構想の支離滅裂/それは一体誰を「敵」とし誰を「味方」として結集される軍事同盟なのか?

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

誰が「敵」で誰を「味方」か。支離滅裂にすぎる石破首相の「アジア版NATO」構想

石破茂内閣は発足早々ヨタヨタで、何よりも不味かったのは、臨時国会で所信表明演説とそれに対する各党代表質問だけでなくその後の予算委員会までじっくり議論に応じ(そこまでNHK中継が入る!)、「国民の皆様に充分な判断材料を提供した上で総選挙に訴える」かのようなことを言っていたのに、手の平を返したようにいきなりの9日解散、27日投開票の「戦後最速」とも言われるバタバタ政局を選んだことで、早速その無定見ぶりが批判に晒されることになった。

戯言に満ち満ちている「アジア版NATO」構想のお粗末

批判のしどころは色々あるが、私が一番酷いと思うのは、彼が長年温めてきてそれなりに自信を持っているかに言われている「アジア版NATO」構想である(文末にハドソン研究所への寄稿の和訳全文を掲載し、本稿で取り上げる最初の3パラグラフに〔A〕〔B〕〔C〕とアルファベットを挿入してある)。しかし、私に言わせれば「これが本当に防衛政策に強いと言われた政治家の言説か」と疑わざるを得ない、戯言(たわごと)に満ち満ちている。

第一に、〔A〕は、ウクライナがNATOに入っていなかったために集団的自衛権に基づく米国の参戦を得ることが出来ず、そのためロシアに侵略されたという石破の認識を示している。何のために彼がこれを強調するのかと言えば、「だからアジアにもNATOのようなものが出来て日本がその一員になれば盟主=米国の庇護を受けられるので、侵略に対する抑止力が一層強化される」と、アジア版NATOの必要性を説明するためだろう。

しかし、たったこれだけの短い文章の中にもいくつもの誤りや曖昧さがあり、これだけを見ても彼が「軍事オタク」かもしれないが(いや、そうであるが故に?)「国際政治オンチ」であることが窺い知れる。

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