たとえ公益通報にあたらなくても、齋藤氏の振る舞いが「為政者」として許されない理由
しかし、もし仮にネット上での上記の言説が真実であろうと無かろうと、それとは無関係に齋藤氏の振る舞いはやはり、「為政者」(Govener:知事)として許されざる振る舞いであったと筆者は考えます(無論だからといって、メディアの偏向報道が許容されるべきだとは全く思いませんが、それとこれとは別次元の問題です。ある罪Aを犯した人物がまた別の犯罪Bの被害者であったとしても、その被害を受けたという事実は、罪Aについての免罪することの根拠にはならない、というのと同じ話です。メディアの偏向報道には当方も辟易しており、それはそれでまた別の糾弾論が必要となると考えますが、その件はまた別の機会に論じたいと思います)。
なぜなら、今回告発されているのが「齋藤知事」の本人であるにも関わらず、その当の本人の齋藤知事自身が、「第三者」の意見を取り入れず、自分自身の知事としての権限を使って、本人の権限で「当該の告発はフェイクである」と断罪し、懲戒処分にしてしまっているからです。
この問題の本質はここにあります。
繰り返しになりますが、この当方の判断は、仮にその通報が「公益通報」に法的に該当するものではなく、完全なる不正なフェイクであったことがこれから明らかになったとしても、変わるものではありません。
すなわち、この告発の「動機」が仮に片山副知事が主張するように「齋藤政権を潰すための意図」があったとしても、また、メディアの報道が偏った者であったとしても、さらには、その告発に「嘘」が多数含まれていたとしても、その告発の中に何らかの「真実」が含まれている「可能性」がある限りにおいて、その告発を、知事という強大な自らの権限でもって「断罪」することは、「公益通報者保護法」の精神の下、許されないものだからです。
そして、内部告発がなされた時点(上記の(3)の時点)で、その告発の中に何らかの「真実」が含まれている「可能性」があったことが強く疑われるからです。
それは、「職権濫用」以外の何ものでも有りません。
仮にこの齋藤氏の振る舞いを正当化するとするなら、断罪する時点で「この告発内容は“全て”虚偽である。したがって、如何なる調査を受けようとも、私は無実であり、この告発内容には一片の真実もないことが、その調査が適正である限りにおいて必ず証明できるのだ」といわねばならなかったのです。
ですが彼は、最初の記者会見の席で「虚偽が多い」といったものの「一片の真実も無い」とは断定しなかったのです(彼が言ったのは、「嘘八百を含む」だの「事実無根の内容が多々含まれ(る)」だのといった「一部に嘘がある」という話しであり、「全て嘘だ」とは言っていないのです)。
この時点で、彼の態度は、為政者として許されざるものだったのです。
兵庫県も「告発に真実が含まれる可能性を排除できない」と認識
しかも、こうした筆者と同様の認識は、齋藤氏が告発内容を記者会見で「嘘八百」「事実無根」という言葉を使って断罪し、法的手段を講ずると宣言する(上記の段階(2))「前」の時点で、「詳細については調査が必要なので申し上げられない」と発言すべきだと進言していた兵庫県内の人事当局も持っていたことが分かります。
https://www.asahi.co.jp/webnews/pages/abc_27385.html
つまり、齋藤知事とは異なる人格を持つ人事当局は、「告発に真実が含まれる可能性を完全に排除できない」という認識を持っていたのです。
さらには、百条委員会の証言によれば、上記(4)の段階で齋藤知事が、告発者の「停職3カ月の懲戒処分」を決定した5月7日の「前」の時点で、『公益通報の結果が出るまでは、処分しないほうがいい』と進言していた県職員もいたとのこと。この県職員も、筆者と全く同じ認識を持っていたと言うことができます。
https://www.asahi.co.jp/webnews/pages/abc_27385.html
これもまた、県庁内の「告発に真実が含まれる可能性を完全に排除できない」という認識を示すものです。
さらに言うなら、齋藤氏は、上記の(9)でもってその告発の内容の「一部」が真実であることを認めているわけですから、「この告発内容は“全て”虚偽である」とは決して言えない状況にあったのです。したがって、今回の件は、齋藤氏は、知事の権限で以て、自らの不適切行為を訴える告発を「完全なる事実無根の嘘の代物」と断罪することは、公益通報制度の理念からして絶対に許されてはならないモノだったのです。
分かり易く言うなら、今回の齋藤知事の振る舞いは「権力者が、自分にとって都合が悪いものの一部は真実も含まれていた告発を、自らの権力でもって『全て虚偽である』という『嘘』をついて、断罪した」という振る舞いになっているのです。
これこそ、一般にメディアでも言われる、彼の「公益通報者保護法違反」を犯した振る舞いなのです。
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