プーチンの狂気。“露を集団攻撃”するNATOを「核ミサイル報復」のターゲットに据える“最凶の皇帝”

 

トランプの影響力なら何とかなるのではという淡い望み

イスラエルとヒズボラの停戦合意の仲介については、実効性は見通せず、ネタニエフ首相は「合意には加わるが、ヒズボラが約束をたがえたら、すぐにイスラエル軍は“自衛のために”攻撃を再開する」とプレッシャーをかけていますし、レバノンのミーカーティー首相も「イスラエルが約束を守ることが停戦の前提だ。かつてのように約束が破られたら、私にはヒズボラを止めることはできない」とこちらもイスラエルをけん制する発言をしており、見事に根深い相互不信の姿が見えてきます。

今回の合意がいかにデリケートで危険なものか見えてきたでしょうか?

まず停戦合意の当事者はイスラエル政府とレバノン政府であり、ヒズボラは直接的なsignerに入っていません。ガザ、パレスチナにおけるハマスとは違い、ヒズボラはレバノン政府の中枢に浸透していることから政治的な“正統性”を主張することが可能と言えばそうなのでうすが、ヒズボラが今回、ミーカーティー首相の顔を立てて一旦矛を収めていますが、直接的な国際合意上の当事者ではないため、見方によってはこの合意の実効性を保証することにはなっていないことになります。

それゆえでしょうか。今回の合意を受けて戦闘が一時停止した時、ヒズボラは今回の合意をヒズボラの勝利と呼び、レバノン国民はミーカーティー首相ではなく、ヒズボラを称賛しています。

「60日間の安寧をヒズボラが与えてくれたのだ」とベイルートの市内で祝砲を挙げて喜んでいた“市民”は叫び、女性たちは涙を流して踊って喜んでいましたが、口々にヒズボラへの謝辞と、イスラエルへの不信感を口にしていたのはとても印象的でした。

「トランプ氏の就任までの時間稼ぎ」というのが、ネタニエフ首相にとっては今回の停戦の本当の理由かと思いますが、今回の合意も先述のように、ヒズボラとの合意ではなく、レバノン政府との合意で、本当にヒズボラにこの合意を履行させるためには、ミーカーティー首相の影響力は及ばず、実際にはイランの指示が必要になりますが、そのイランも対イスラエルの戦いには、ヒズボラの存在とその戦力が必須なため、なかなかヒズボラに矛をおさめさせるようなことはしないだろうと思われますし、今回、アメリカが国際監視メカニズムに加わっていることから、対アメリカの交渉カードとして、ヒズボラへの影響力の行使の可否を使おうとすると思われるため、60日というタイムリミットは、かなりタイトな気がします。

それはネタニエフ首相も重々承知しており、今回の停戦の目的は「ヒズボラを一旦戦闘から引き離すことで、ガザにおけるハマスの孤立を強めること」と、ロシア・ウクライナ双方のリーダーの思惑にも合致しますが、「トランプ氏を説得してガザの停戦や戦後の介入について有利な条件を引き出したい」というものだと思われます。

さらにはネタニエフ政権の存続を左右する極右勢力が主張する【ヨルダン川西岸地区のイスラエルへの併合】という無理難題も、トランプ氏の影響力なら何とかなるのではないかという淡い望みも見え隠れします。

ゆえに一部報道で希望的観測として挙げられた「これがガザ問題の解決のヒントになればいい」という見解は、非常に残念ですが、成り立たないことが分かるかと思います。

それは、前政権時にも起きたように、トランプ氏はバイデン氏が退陣前に駆け込みで実現しようとした地域の混乱収拾への足掛かりを、誠意をもって引き継ぐことはないという信念にも似た思いが背後にあるからでしょう。

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