プーチンの狂気。“露を集団攻撃”するNATOを「核ミサイル報復」のターゲットに据える“最凶の皇帝”

 

米国に求められる一貫した戦略と強力な指導力の継続的な発揮

もしネタニエフ首相が政治的な延命を望むのであれば、恐らく彼は戦争を終結させることはなく、ガザ、レバノン、イランなどに順繰りに圧力をかけ、危機を演出する動きに出るように思われます。問題はそれをトランプ大統領が支持するかどうかですが、もしトランプ大統領とアメリカ政府が、本気で「戦争を終わらせ、混乱を終息(収束)させる」のであれば、アメリカは一貫した戦略と強力な指導力を継続的に発揮していかなくてはなりません。

それは中東問題の混乱のみならず、ロシア・ウクライナの終わらない戦争、そして作り上げられた米中の衝突と台湾危機への対応にも当てはまる【包括的な戦略(grand comprehensive Vision and strategy)】だと考えます。

バイデン大統領が退任前に駆け足でレガシーづくりに勤しむあまり、これまで何とか保ってきたデリケートな和平と安定のバランスが崩れ始めています。

残念ながら誰もそれを止めることが出来ず、“同盟国”は挙ってバイデン大統領の最後っ屁に追随し、ロシアに対して危ない賭けを仕掛け、中東における張りぼての見せかけの停戦合意を称賛し、口先ではイスラエルのガザでの所業を非難しつつも、結局は黙認して、解決を先延ばしにしています。

スーダンでは人道危機が深刻化し、30年にわたる内戦が粛々と進められ、エジプト・スーダン・エチオピアを巻き込んだGrand Ethiopian Renaissance Damを巡る紛争が静かに激化していますし、目をコーカサスに向ければアゼルバイジャンとアルメニアを舞台にしたトルコとロシア、そしてアメリカの小競り合いが表面化していますし、スタン系の国々はロシアとの関係をデリケートなバランスで見直しつつ、自国の安全を確保する戦略を、中国を上手に引き込みながら進めています。

ロシアとウクライナの終らない戦争は周辺国を生存の脅威に曝し、各国に自衛のための軍備拡張を促す結果に繋がり、結果として地域の不安定化の要因と認識され始めています。

「時間稼ぎ」で体力を温存する中国

そして相互に内政不干渉の原則を貫くASEANと中国も、微妙なバランスを保ちながらアジア太平洋地域での繁栄に向けて協働していますが、そこには中国以外のバランサーを欲する勢力と、アメリカと欧州は避けたいと強く願う勢力、そして中国を中核に据えたアジア勢力圏を作るべきと主張する勢力が拮抗する状況が生まれ、その勢力間のデリケートなバランスで何とか安定を保つアジアの現状が存在します。

中国は、アメリカ政府の対応の不確実性に備えるため、今、一気にアジアシフトを強めており、敵対よりもパートナーシップを重視する方針を取っているように見えます。台湾にまつわる事項はすべて“国内問題”として扱うため、アジア諸国は内政不干渉の方針から口出ししませんが、その条件には「地域における安全保障上の危機を引き起こすことが無いようにする」というお約束が含まれているようです。

中国政府は今、アジア外の紛争に対しては距離を置き、仲介・調停の用意があることは示しつつも、火の粉を被らないように注意し、自国の経済の立て直しに注力し、時間稼ぎをして体力を温存しているように思われます。

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