ホンマでっか池田清彦教授が問う。本当に「少子化は悪」なのだろうか?

 

現在も、国家権力とそのフォロワーたちが少子化を目の敵にしているのは、国家の指導層にとって、人口が減るのは歓迎できないからである。戦後の日本では、国家権力のメインイデオロギーは軍国主義からグローバルキャピタリズムに変わったが、グローバルキャピタリズムは人口増とエネルギー増を前提として成り立っているので、人口減は忌避すべきことなのである。

短期的な経済的利益を追求する企業は、低賃金で働く労働者を必要とすると同時に、消費者に沢山製品を売りたい。少子化は労働者と消費者の減少をもたらすので、少子化が止まらなければ、グローバルキャピタリズムはクラッシュを起こすのである。そこで、日本ではあの手この手で少子化を止めようとしているけれど、ほとんどは精神論か、雀の涙程度の補助政策であるため、賢い女性たちは笛吹けど一向に踊らぬ状態になっている。一人の子を育てるには相当なコストがかかり、それを上回るメリットはあるのだろうかと考えれば、少なくとも金銭的なメリットは全くないと考えざるを得ない。

2024年の11月に刊行した内田樹との対談『国家は葛藤する』(ビジネス社)でも述べたように、すべての日本国民に月8万円のベーシックインカムを支給すれば、子を産むとその時から毎月8万円の収入があるので、少子化はあっという間に解消するに違いない。今の日本のように、国民から税金を搾り取って、共稼ぎでやっと生活ができるような給与水準では、少子化の解消は夢のまた夢である。

多くの論者は、少子化を悪の権化のように言いつのっているが、生態学的に見れば、人口が少なければ、一人頭の資源量が増えるので、素朴に考えれば、個人の幸福度は増加するはずだ。日本の人口は100年後に3000万人くらいまで減少して、様々なインフラを維持できなくなると心配する人がいるが、それは現行のシステムを保持しようと思うからで、人口減に合わせたシステムに変えた方が賢いのは言うまでもない。

3000万人というのは江戸時代の人口で、この人口ならば現在の食料自給率38%(カロリーベース)は100%以上に跳ね上がり、輸入に頼らなくても国民が飢餓に陥る危険はなくなる。人口減少社会で、右肩上がりの経済を維持しようというのはそもそも無理難題で、もがけばもがくほど、ドツボに嵌るのは目に見えている。賃金を上げずに労働をさせて、さらに消費量も増やそうとすれば、比較的低賃金で働く外国からのーーー(メルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』2024年12月27日号より一部抜粋。続きはご登録の上、2024年12月号のバックナンバーをお求めください。ご登録は初月無料です)

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