トランプ「米にケンカ売る国は容赦しない」の本気度。世界を火の海にしかねぬ“トランプ2.0外交”の大混乱

 

否定できぬ中東地域で核兵器開発ラッシュが起きる可能性

イランの現体制が追い込まれている中、最も懸念されるのは「イランの核兵器開発の本格化」です。

これまでイラン核合意の崩壊後も、欧州各国との外交的な協議を続け、またIAEAの査察なども受け入れて、「あくまでも核開発はエネルギーなどの平和利用のため」であることを示そうとしてきましたが、イスラエルに“イランの衛星国と組織”がやられ、欧州各国も“トランプの再来”に備えてイランとのコンタクトを控えていることもあり、もし1月20日からスタートするトランプ政権が、第1次政権時と変わらないかそれ以上の強硬姿勢でイランに圧力をかけるような事態になれば、あくまでも推測に過ぎませんが、国内の強硬派および実質的な指導者であるハメネイ師からの圧力と、イスラエルとの緊張の高まり、イランの体制維持に対する危機などから、穏健派とされるマースード・ペゼシュキヤーン大統領は、強硬派の勢力に押されて、封印してきた軍事的な核開発の再開へと舵を切らざるを得なくなるかもしれません。

すでにイランのウラン濃縮技術は、短期間に軍事的なレベルまでの濃縮(ウラン235を93%程度まで濃縮)が可能なレベルまで到達していると言われ、マースード・ペゼシュキヤーン大統領が“イランの国家安全保障のために”との名目でゴーサインを出した暁には、中東地域における安全保障上の緊張は一気に高まることになります。

今、イランとサウジアラビア王国、UAEは外交的な協力を深め、直接的な対立事項をことごとく棚上げにして不要な衝突を避けようとしていますが、以前よりサウジアラビア王国もUAEも「イランが核開発を行うのであれば、我々も行うべきであるし、その権利を有する」と公言しているため、中東地域における核兵器開発ラッシュが起きる可能性は否定できません。

また公表はしていなくても、周知の事実として、イスラエルは核兵器を保有していると思われるため、現在のイスラエルとイラン、そしてアラブ諸国を巻き込んだ軍事的な緊張は、あっと言う間に核兵器を含めた緊張に発展しかねないことを意味することから、これは国際安全保障の観点からは、非常に重大な危機と言わざるを得ないでしょう。

基本的に海外案件へのこれ以上のコミットメントは避けたいと願っていると言われているトランプ大統領ですが、シリアへのトマホークミサイル発射の一例を除いて、軍事的な介入を行わなかった第1次政権時とは違い、第2次政権スタートを前に、案件こそ異なりますが(グリーンランドを米国領にしたいと願うことと、パナマ運河を取り戻すこと)、「必要とあれば、軍事的な解決も辞さない」と、真意は読み取れませんが、公言しているのは、今後の国際情勢を予想するにあたって大きな懸念材料だと認識しています。

特にイランが核武装し、アラブ諸国がそれに続くような事態になれば、必要以上にイスラエル側に立って中東にコミットせざるを得なくなり、十中八九、トランプ大統領のアメリカは中東地域の泥沼に引きずり込まれることになるでしょうし、戦争嫌いとされるトランプ大統領ですが、「世界を滅茶苦茶にする・アメリカにケンカを売る国に対しては容赦しない」というメンタリティーになった場合、イランに対する直接的な軍事行動の実施に繋がる恐れがあります。

イランのペゼシュキヤーン大統領はその事態を恐れていると考えられますが、仮にアメリカによる軍事介入に晒される場合には、持てる力を総動員してイスラエルを本格的に攻撃し、並行してアメリカ国内でのテロ攻撃に及ぶような選択を行うかもしれません。

そうなると、確実に世界は火の海になります。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

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