トランプ「米にケンカ売る国は容赦しない」の本気度。世界を火の海にしかねぬ“トランプ2.0外交”の大混乱

 

トランプ政権の4年間で見かけは静けさを取り戻すウクライナ案件

ではどのようなディールが成立可能なのでしょうか?

どのような形式を取ったとしても、一つ確実視されているのは、トランプ氏の思惑とは異なり、この戦争は長期化するということでしょうか。

プーチン大統領は「ロシアはいつでも停戦協議のテーブルに着く用意がある」と公言しつつも、常に「ロシアが提示する条件をウクライナが受け入れるならば」というBig Ifが付き、その内容は不変です。

もしこのBig ifを、プーチン大統領が国内外に“ロシアの勝利”をイメージ付できる形で、トランプ大統領が停戦合意としてまとめるのならば、ロシアは戦闘を一時的に停止することに合意しつつも、時間稼ぎをして、その後に計画している長期的な対立に備えて軍備と体制を整え、元々の目的であったウクライナ全土の掌握と親ロシア政権の樹立に向けて、爪を研ぐことになるでしょう。

その場合、ロシアは軍を再建し、占領地域でウクライナ文化なるものを弾圧して破壊し、人口動態を操作することで実質的な支配を固めて、クリミアのように、再侵略の布石とするのではないかと予測されます(ただし、トランプ政権中は、プーチン大統領とロシアは大人しくしていることで、トランプ氏の顔を立てて、予測不可能な反応を回避するように振舞うと思われますが)。

このディールが成立する場合、表向きには“戦闘の凍結”という帰結になり、戦闘の停止を米軍以外のNATO(トルコ含む)に担わせて、アメリカは手を退くという形式になるものと思われ、欧州の“同盟国”に非常に大きな重責を負わせて、実質的に破綻させると同時に、好むかどうかは別として、トルコの影響力拡大を後押しすることに繋がると思われます。

ウクライナ問題は、アメリカにとっては国家安全保障上の問題ではなく、以前のように世界の警察官としての役割を放棄し続けるのであれば、“どうでもいい”案件と考えられるかもしれませんが、地続きでロシアの脅威をひしひしと感じなくてはならない欧州各国にとっては、まさに安全保障上の大きな脅威が未解決のまま、自分たちの手に委ねられるということになりますので、すでにウクライナ支援疲れとアレルギーが顕著に表れている欧州には、それを担い、ウクライナを支え続ける力も意志もないかと考えます。

トランプ政権の4年間は、ロシア・ウクライナ案件は、見かけは静けさを取り戻すかもしれませんが、欧州各国とウクライナ、そしてその周辺国にとっては、4年間の時限爆弾のようなもので、トランプ氏が去った後、よほどアメリカが国際的な守護神の地位に関バックするような政策と戦略の大転換を行わない限りは、ロシアによる本格的な蹂躙の危機に晒されることになりそうです。

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