トランプ「米にケンカ売る国は容赦しない」の本気度。世界を火の海にしかねぬ“トランプ2.0外交”の大混乱

 

ふたを開けてみないと分からぬ中東紛争のディール・メイキング

ロシア・ウクライナ問題の解決が不十分になりそうなのはこれまでお話ししたとおりですが、中東案件、特にイスラエル絡みの諸紛争に関するディール・メイキングはどうなるでしょうか?

結論から言うと「ふたを開けてみないと分からない」というのは、ウクライナ案件と変わらないのですが、中東危機の鎮静化に向けての鍵は【いかにトランプ大統領がネタニエフ首相の暴走を制止できるか】にかかっているかと考えます。

バイデン政権時代から、ネタニエフ首相とイスラエルは、アメリカ政府を含む国際社会からの非難に晒されていても意に介せず、ガザへの攻撃の手を緩めず、これまでに少なくとも4万2,000人以上の殺害を行い、同時に国際人道法に反してでも、ガザに対しての人道支援を妨害し、空からは爆弾、陸地では容赦ない砲撃、そしてガザ市民のbasic needsの停止という徹底攻撃を止めようとしません。

何度かカタール、エジプト、アメリカの仲介で“停戦”の機運が高まっても、すぐにイスラエル側が“重大な嫌疑が生じた”とガザへの攻撃を再開し、激化させ、さらなる犠牲を生むという繰り返しです。

これはヒズボラ掃討作戦の激化が顕著になると、報道上は収まったかのように扱われていましたが、見えないところでガザへの徹底的な攻撃は継続し、仲介にあたっていたカタールやエジプト、アメリカの担当官も「イスラエルは戦闘を停止する気は毛頭なく、これを機に一気にパレスチナ問題を解決してしまおうと、狂ったかのように殺戮を繰り返している」と恐怖・狂気の沙汰を表現していました。

この恐怖の沙汰も、トランプ氏が次期大統領に当選したことが分かると、ネタニエフ首相はそれをチャンスととらえ、一気に攻勢を強め、トランプ氏への働きかけも強めて、トランプ第1次政権時のように、できればそれ以上に、トランプ政権を親イスラエルに振り切らせ、イスラエルが行う“安全保障上の脅威の徹底的な除去”作戦の完遂を黙認してもらおうという狙いの下、ガザへの攻勢を強め、ヒズボラの掃討を徹底し、長年の懸案だったゴラン高原の支配も固定化して、周辺から脅威を除去する道を突っ走っています。

この動きには、かつての盟友であった前国防相のガラント氏も反旗を翻し、国会議員まで辞職して、これからネタニエフ首相と極右の仲間たちが行おうとしている凶行から距離を置こうとしているようです。

今回は政権には加わらないと言われている娘(Ivankaさん)の夫、Jared Kushner氏がユダヤ人で、極めてイスラエルシンパであることは少なからずとも影響するものと思われますが、トランプ氏の再選において、アラブ系アメリカ人(必ずしもすべてがイスラム教徒ではないことに注意)からの支持を得ていることと、中東からアメリカを引き離したままにしておくには、アラブ諸国との連携が不可欠であることなども踏まえると、少なくとも、前政権時に比べると、イスラエルとアラブの間で(それでもイスラエル寄りになるのでしょうが)、バランスを取ろうとするのではないかと考えています。

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