トランプ「米にケンカ売る国は容赦しない」の本気度。世界を火の海にしかねぬ“トランプ2.0外交”の大混乱

 

第2次トランプ政権の外交の成否を分けるもの

ここでカギとなるのは、対応を国家および国家相当の組織と、非政府組織に対する態度を分けることではないかと思います。

“パレスチナ”といっても、そこでファタハをはじめとするパレスチナ自治政府と、テロリスト認定しているハマスを切り離して、前者と接近して友好的な立場を示して宥め、ハマスには冷酷な対応を行うことにして、ハマスに対する攻撃についてはイスラエルに許可しても、ヨルダン川西岸におけるユダヤ人入植の拡大には反対するという、微妙な采配を取るかもしれません。

同様のことはレバノン政府とヒズボラに対する扱いに温度差を設けるといった措置にも現れるかもしれませんし、新生シリアとゴラン高原問題との切り分けという措置にも現れるかもしれません。

かねてより、トランプ氏はシリアにおける混乱を指して「アメリカがシリアに関わるべきではなく、シリアの今後はアラブの周辺国に委ねるべき」と言っていますが、アメリカの外交の成否を分けるのは、もしかしたら“それを徹底できるかどうか”にかかっているのではないかと感じています。

もしシリアに関わるようなことになれば、アメリカは必然的に、イスラエルとイラン、アラブ諸国によって、中東地域に引き戻されることになり、恐らく、イラクやアフガニスタンのケースがそうであったように長年関与させられることに繋がりますので、その一線を踏み越えないことがとても重要になります。

もちろん、イランが核開発を断行し、中東地域に“核戦争前夜”のような激しい緊張が生まれた場合には、話は異なってくるでしょうが、アメリカを不必要に海外案件に介入させないというポリシーを貫くためには、イランの扱いにも気を配らないといけなくなるでしょう。

戦争当事者のロシア・プーチン大統領やイスラエルのネタニエフ首相としては(そして恐らくウクライナのゼレンスキー大統領も)、トランプ氏をおだてて引きずり込み、アメリカをsolutionsにかませ、それぞれの地域で足止めすることを願っているでしょうから、いろいろな仕掛けをしてくることが予想されます。

恐らくウクライナにおいても、中東においても、出される“解決策”はあくまでも【戦闘の凍結】と【短期的な停戦】であり、その結果、4年間の沈黙と水面下での本格侵攻の準備が各地で進められ、トランプ氏が去った後は、再び血で血を洗う紛争が爆発するか、強者による弱者の徹底的な蹂躙(例として、ロシアによるウクライナの壊滅や、イスラエルによるパレスチナの破壊と吸収など)が行われかねません。

それを防ぐには、目先の停戦や戦闘の凍結ではなく、未来ビジョンを明確に描いたうえでの停戦と戦後復興に向けたクリアな実施プランの作成と合意、そして実施が必要になるのですが、それを可能にするには、ロシアの企てを挫くべく、アメリカも欧州もウクライナへの支援を継続して支えつづけなければなりませんし、アメリカ政府もイスラエルに対する戦略を再考し、イスラエルによる暴走を制御する仕組みを作り実施するか、イスラエルを見放すといった極端な変更を行う必要があるように考えます。

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