狙うは「トランプ退任後」か。停戦“受け入れ”のプーチンが着々と進めるウクライナと周辺国へ「大規模本格攻撃」の準備

 

ゼレンスキーの要求には応える気のないトランプ

そんなことになると、実質的にウクライナは終わりでしょうし、ゼレンスキー大統領の立場も一気に危なくなることになります。

ゼレンスキー大統領はそのような危機を十分に察知し、トランプ氏が再選されてから必死に直接にアピールしていますが、トランプ大統領に要求を突き付けるような姿勢を取っていることで、トランプ氏はゼレンスキー大統領を相手にしていないようで、ゼレンスキー大統領からの要求には応えようとする気持ちがありません。

欧州の調停官の分析によると、トランプ氏はゼレンスキー大統領を「自らの対プーチン大統領のディール・メイキングの駒」としてしか見ておらず、プーチン大統領に停戦を呑ませるための“咬ませ犬”程度にしか扱っていないとのことです。

プーチン大統領には「私が提案する停戦案に合意して停戦を実現することを要求する。もし拒んだ場合には、アメリカ政府は前政権とは比較にならないレベルの軍事支援をウクライナに与え、ロシアの企てを阻む」と圧力をかけ、ゼレンスキー大統領に対しては「私が提示する停戦条件を呑めないなら、アメリカからの軍事支援は即時停止し、あとは当事者間での解決を促すことになる」と脅して、両者を協議のテーブルに就け、停戦を実現しようとしています。

これは、プーチン大統領にとっては恐らくさほど難しくないことなのだと思いますが、ゼレンスキー大統領にとっては命取りのディールになり、恐らく大統領の座から追われることになるでしょう。

プーチン大統領としては、自身が生存しているという大前提がありますが、トランプ政権中は大人しく停戦条件を遵守しているかと思いますが、水面下で軍の立て直しと軍備の調達などを急ピッチで行い、トランプ退任後の来るべき時期により大規模かつ本格的な攻撃をウクライナとその周辺国に加えるための準備を着々と進めることになるでしょう。

もしそれを知りつつ、アメリカが見逃すようなことがあれば、今回のオペレーションにおいて反ロシアに回った各国や、新しくNATOに加盟し、反ロシアの姿勢を鮮明にしたフィンランドやスウェーデン、そしてプーチン大統領の頭の中で“ロシアに対する裏切り国家”というイメージが消えることがないバルト三国に、そう遠くないうちにロシアが牙をむく可能性が出てくるかもしれません。

ウクライナが実質的に消滅し、ロシアに牙をむいた各国も大打撃を受けるような事態が生まれた場合、トランプ氏が去った後のアメリカや、直接的にロシアの脅威と対峙することになる欧州、そしてスタン系の国々などは果たしてどのような対応を取るでしょうか?そして、ロシアと仲良くしてきた中国はどのように動くでしょうか?

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