トランプ2.0は内弁慶?国内ウケ重視の“移民狩り”に注力
事態が急展開した問題と言えば、バイデン前政権が、駆け込みで実現したイスラエルとガザの和平について、トランプは「ちゃぶ台返し」はしませんでした。やろうと思えば妨害はいくらでもできたし、場合によっては「和平は俺様の功績」だなどと強弁することもあり得たと思います。
もしかしたら、サウジの強い意向を受けた動きだったのかもしれません。つまりイスラエルの中道左派と組んで「脱石油のハイテク経済社会」を実現するには、どうしても平和が必要というサウジの利害に乗った中では、トランプ政権としてもガザ和平を止める理由はなかったのかもしれません。そうではあるのですが、これもトランプとしては「おとなしい動き」です。
またロシアとウクライナの問題については、就任後のトランプは露骨にプーチンにすり寄った発言をするかと思われていたのですが、意外とロシアにも批判的です。つまりはNATOの立場に比較的近い言動になっています。これも、NATOを敵に回さないということを、ヴァンスやルビオから強く言われているからだと思います。加えて、仮にカネの問題で以前はプーチンに弱みを握られていたのなら、イーロン・マスクの資金でその束縛から自由になったのだという可能性もあります。
一方で国内向けの「過激度が加速する劇場型政治」については、どんどん進められているのが現状です。例えば、不法移民「狩り」については、当初は「凶悪犯から」などという説明もあったのですが、就任直後から特別な機関「ICE」のエージェントをフル稼働させて「1日1200人程度」のペースで、どんどん強制国外退去を進めています。
このペースでやると、社会の混乱、そして何よりも農業、畜産、サービスの現場における壊滅的な人手不足が発生しますが、そうした弊害が見える形になるまでには多少のタイムラグがあるわけです。当面は過激に行くというのは、そうした時間差の問題も考慮してということだと思います。
驚いたのは、基本的にアメリカの友好国であるコロンビアに対する脅しです。「不法移民の国外追放」のためのチャーター機受け入れを渋っていたコロンビアに対しては、受け入れないと「25%の高額関税をかける」「在米のコロンビア外交官の外交ビザを無効にする」という脅迫を行ったのでした。
これは、同じく25%の関税を適用すると脅しているカナダとメキシコのうち、コロンビアと同じ女性大統領を交渉相手としているメキシコに圧力をかける目的、そして不法移民の国外追放を加速させる演出を重ねているのだと思います。やり口としては、ほとんど映画『ゴッドファーザー』で描かれた、相手を屈服させる手法に酷似していますが、こうした方法論における過激度は確かに第一次政権とは異なっています。
個人的には、こうした形で相手を屈服させても、そんなニュースを喜ぶ層は、そもそもニュースなど見ていないので無駄だと思うのですが、もしかしたら、御大自身がこうした手法を好んでいるのかもしれません。結果は、コロンビアがすぐに妥協して、不法移民のチャーター機を受け入れたのでした。









