なぜトランプ政権2.0は「難しい話はわかんねぇよ」ドリブンなのか?不法移民狩り、WHO・パリ協定離脱…劇場型政治のアクセルとブレーキを整理する

 

中国との関税問題、国防長官人事のポイント

そんな中、当面の焦点は中国に対する関税交渉です。トランプは、就任式に習近平主席を招待し、中国は代わりに韓正副主席を送ってきました。

ヴァンス以下のトランプのチームは、韓正氏を丁重に接遇し、もちろん、同氏は就任式に列席しています。そのうえで、とりあえず1月末をメドに関税交渉を進めるとしており、その税率も当初の60%から今では10%まで軟化しています。

その他の動きとしては、国防長官に有名なTV司会者のピート・ヘグセス氏を充てるというかなりの「トンデモ」人事は、承認される可能性は半々だと言われていたのが、下馬評どおり「50・50」の票決となりました。共和党から3名の造反が出て賛否同数になり、ヴァンス副大統領(上院議長)の1票でかろうじて可決という際どい結果でした。

このヘグセスの人事については、パワハラ・セクハラやアル中の疑惑などが問題視されたほか、軍務経験があるといってもメジャー(少佐、日本では1佐)レベルの人間というのが懸念でした。それが日本で言えば防衛大臣になるのですから、かなり無理のある人事です。そして何よりも、妙なキリスト教原理主義者で、中東の2国家体制を否定するなど、国際社会に対して敵対する思想を持っているのが問題です。

また、極端な孤立主義の持ち主で、自分の任務はあらゆる戦争に関わらないことだなどと、抑止力概念を否定するような態度を取って平然としています。この人物に加えて、明白な反日思想を持っているトリシ・ギャバード氏がCIA、NSA、各軍の諜報部門の頂点に君臨する情報長官に指名されています。

彼女が「万が一にも」承認されて着任するようですと、これは日本の安保体制にとって危険極まりません。同盟国なのに、諜報戦略において常時レーダー照射されるようなものだからです。

トランプ政権、肝心の経済はどうなる?

それでは、ここまで紹介したような様々な劇場型政治、つまり「トンデモ」政策を宣言し続けているトランプ政権に関して、肝心の経済はどう見たら良いのでしょうか。

まず、基本的にドナルド・トランプという人は、株式市場にはあまり興味はないようです。ですから、第一次政権の際もそうでしたが、市場への口先介入というのは起きていません。その一方で、景気と物価はどうかと言うと、現時点でのアメリカ経済においては、次のような構図があります。

「現在は長い好景気が加熱した状態」

「だからこそ、物価はジワジワ上がりこそすれ、下がる気配はない」

「物価を下げるには景気を意図的に減速させる必要がある」

「その際には、多少は失業率が上がるぐらいでないと効果はない」

「原油高はインフレの当初の要因だったが、今は人件費、人手不足が主因」

ですから、移民追放とか、輸入関税拡大というのは、どう考えても悪手です。それに加えて、物価を優先するならば、景気の抑制が必要。また景気拡大を優先するのなら、一段高いインフレを許容しないといけないわけです。

ですが、恐らくトランプのコアのファン、特に経済的に困窮スレスレの層というのは「そんな複雑な話は理解しない」のです。ですから、トランプとしても説明する気もなさそうです。

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