なぜトランプ政権2.0は「難しい話はわかんねぇよ」ドリブンなのか?不法移民狩り、WHO・パリ協定離脱…劇場型政治のアクセルとブレーキを整理する

 

トランプ政権下での「AIバブル崩壊」の可能性は?

では本当のところの景況感はどうかというと、方向性は定まっていないと考えられます。景気に過熱感があったとして、例えば小売や問屋が過剰在庫を抱えて財務内容が悪化する、その積み重ねが景気や株価の崩壊につながるというような現象は、アメリカでは発生しにくいのです。

DXが小売と問屋の在庫管理を非常に精緻にしたために、需要と供給と価格はダイナミックに動いて、全体の変動を吸収するようになっているからです。では、設備投資が過剰となって恐慌が発生するかというと、製造部門は空洞化して外に出していますから、これも大きな要因ではありません。

ところで、21世紀に入ってからは、アメリカ経済を大きく左右するのは、

(1)大規模な戦争などの世界経済の環境悪化(2001年の911テロなど)

(2)異常なまでの負債の顕在化(2008年のリーマン・ショック)

(3)長期研究開発投資の過剰、テック企業の長期リターンへの疑念噴出(2000年以降のITバブル崩壊)

といったパターンになります。通常運転の消費変動の振幅が激しくなって、結果的に深い景気の谷がやってくるというのは基本的には「ない」のです。では、上記の中の(1)については当面は想定されるものはありません。(2)については、リーマン・ショックに際しては、信用履歴の低い(サブプライム)不動産ローン債権のクラッシュが起きたわけです。

現在こうしたクラッシュが起きるとしたら、可能性が高いのは膨張気味となっている消費者のクレジットカード債権ですが、これは不動産ローンとは性格が異なっています。そして、中央銀行に当たる連銀(FRB)は、このクレジットカード債権を監視する中で、きめ細かい金利政策を取っているのです。

一方で1つ可能性があるのは「(3)長期研究開発投資の過剰、テック企業の長期リターンへの疑念噴出(2000年以降のITバブル崩壊)」です。

現在はAI関連投資ブームが加熱しており、もしかしたら、この分野でバブルが崩壊するかもしれないと言われています。ですが、2000年のITバブル崩壊と比較すると、いい加減な事業計画がバレるまで膨張するというような「のんきな」状況はありません。

日々揺れ動く状況の中で、激しいマネーゲームが行われており、しかもAIについては、アメリカは中国と厳しい開発競争を戦っています。もしかしたら、バブル崩壊があるかもしれませんが、トランプ政権には業界の主要人物であるイーロン・マスクが入っており、彼はアメリカのAI開発においてもキーマンですから、今すぐに崩壊ということは考えにくいと思います。また、AIという分野は、トランプ氏本人も、またコアの支持層も「まったく理解していない」分野ですから、トランプ政権になって方向性が大きく変わるということは現時点ではありません。

もちろん、本日、1月27日に発生した中国のAIベンチャー「ディープシーク(DeepSeek)」を巡る騒動などは、AIと政治、AIと安全保障が絡んだ極めて複雑な話になっています。ですが、この問題に関するリスクがトランプ政権になって激化したということではないと思います。

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