知識や計算の試験だけではダメ。日本の医学部入試でも導入されるべき「マルチプルミニ面接」とは?

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解剖実習中の写真をSNSに投稿した女性医師が炎上した件は記憶に新しいですが、今後も同じような“倫理観が欠如”した医師が増えないかと不安を感じている方も多いのではないでしょうか。現役医師である徳田安春先生は、前回の記事で医師の倫理観欠如という問題について「医学部入試の改革が必要」と提言。そして今回、自身のメルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』にて、一部のスキルだけでなく幅広く評価できる「マルチプルミニ面接」について解説しています。「世界ではメジャー」とのことですが、一体どのような面接スタイルなのでしょうか?

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医学部入試では世界的にメジャーな面接試験を導入せよ

「マルチプルミニ面接」とは?

「マルチプルミニ面接」(MMI)という言葉を聞いたことがありますか?世界の医学部入試ではメジャーとなっている面接スタイルだ。

この面接法は、科学的エビデンスのある面接方法で、候補者の多様なスキルを評価するための効果的な手法である。今回は、このMMIがなぜ重要なのか、どのように行うのか、そしてどのように評価するのかをわかりやすく解説する。

まず、MMIの重要性について説明する。従来の面接方法では、候補者の一部のスキルしか見られないことが多い。一方、MMIは複数のステーションとしての面接場面を設定し、それぞれで異なるスキルを評価する。

これにより、候補者の多面性をより正確に評価できるのだ。例えば、あるステーションではコミュニケーション能力を、別のステーションでは問題解決能力を見る。これが、MMIが科学的に信頼性が高いとされる理由だ。

MMIの手順

MMIでは、過去の行動に基づいた質問(PBQ)と仮想状況に基づいた質問(SQ)を使う。PBQでは、「過去にどのような状況でどのように行動したか」を尋ねる。例えば、「高校時代に同級生や先生方との関係構築で苦労した場面について教えてください」といった質問だ。

一方、SQでは、「もしこういう状況になったらどうするか」を尋ねる。例えば、「あなたが研修医になったと仮定して、患者への対応方針についてあなたの考えと指導医の考えが違う場合、どう対処しますか?」というような質問である。「患者の家族の希望が、医学教科書の内容と異なる場合にはどう対処しますか?」なども面接質問として使える。

次に、MMIの評価基準について説明する。評価基準には、信頼性、妥当性、受容性、実行可能性の四つの要素がある。信頼性とは、何度やっても同じ結果が得られるかどうかだ。

受験者が黙ってしまった場合

妥当性とは、観たいスキルが正しく評価されているかどうかを指す。受容性とは、受験者と評価者の反応を評価する。例えば、公平に感じるか、公正であるかなどだ。実行可能性とは、手間と効果のバランスを評価し、実際に運用可能かどうかを判断する。

具体的な行動を引き出すための質問方法として、PBQやSQは非常に効果的である。また、受験者が黙ってしまった場合には、質問をリフレーミング(少し違う形で再度尋ねる)したり、エコー(候補者の言葉を繰り返す)したりすることで、話を続けやすくする。例えば、候補者が「その時は難しかったです」と言った場合、「難しかったのですね。その具体的な理由を教えていただけますか?」と返すことで、より具体的な情報を引き出すことができる。

このように行うと、MMIは科学的かつ多面的に候補者を評価するための非常に有効な手法となる。現行の学力試験では人間性や共感力を評価することは難しい。医学部入試にMMIを導入して、倫理感を持つ医師を養成することに取り組んでほしい。

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