フジ中居問題の根本原因か。権力集中による人権侵害と意思決定の不透明性を温存するテレビ局の大問題

 

自由な立場で情報発信。「パブリックアクセスチャンネル」の意義

世界にはパブリックアクセスチャンネルというものがある。これは、市民が自ら制作した番組を放送する機会を提供する革新的な仕組みとして、1980年代のアメリカで誕生した。この制度は、ケーブルテレビ事業者が地域独占権を得る代わりに、一般市民に番組制作と放送の場を提供することを義務付けたもの。

ただ、パブリックアクセスチャンネルの本質は、メディアの民主化と言論の自由の拡大にある。従来のマスメディアでは取り上げられにくかった地域の課題や少数派の意見を、市民自らが発信できる場を創出することで、多様な視点と表現の機会を保障していく(*5)。

パブリックアクセスチャンネルの意義は、単なる市民の表現の場の提供にとどまらない。この制度は、メディアの多様性を確保し、民主主義の基盤を強化する重要な役割を果たす。従来のマスメディアが、政治的・経済的な利害関係に影響されやすい構造を持つのに対し、パブリックアクセスチャンネルは、そうした制約から比較的自由な立場で情報発信ができる(*6)。

コンテンツと放送の分離モデルは、近年のデジタル技術の発展とインターネットの普及により、さらに進化している。例えば、YouTubeのような動画共有プラットフォームは、パブリックアクセスチャンネルの理念を現代的に発展させたものとも見ることができる。

パブリックアクセスチャンネルとは?

定義:一般市民が自由に番組を制作・放送できる公共チャンネル
目的:メディアの民主化と多様な意見の表現を促進
運営:通常、地方自治体やNPOなどが管理
特徴

  • 商業的な制約を受けない
  • 低予算で制作可能
  • 地域に密着した情報を提供
  • マイノリティの声を反映しやすい

歴史:1970年代にアメリカで始まり、各国に広がる
法的根拠:多くの国で法律や条例により設置が義務付けられている
資金源:ケーブルテレビ会社からの拠出金や公的資金など
課題

  • 視聴者数の確保
  • 制作技術の向上
  • 持続可能な運営モデルの構築

日本での状況:一部の地域で実験的に導入されているが、全国的な普及には至っていない
デジタル時代の展開:インターネット配信との連携や、ソーシャルメディアの活用が進んでいる

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引用・参考文献

(*1)鈴木秀美「新放送法における放送の自由─通販番組問題を中心として─

(*2)「公共メディアの先駆者を目指すイギリス」第26回JAMCOオンライン国際シンポジウム

(*3)「How Monopolies are Making TV Worse」PROMARKET 2023年11月10日

(*4)「Television in the United States」Britannica

(*5)「パブリック・アクセスの意味・解説 」Weblio辞書

(*6)「市民のメディア参加-パブリック・アクセスを考える-」立命館産業社会論集 2000年3月

(『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』2025年2月9日号より一部抜粋・文中一部敬称略)

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伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

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