日本が「NATO崩壊、日米安保消滅」に備えるべき理由
では、この一連の動きの背景にあるのは何かというと、具体的には「アメリカの支援疲れ」が顕著に見えますが、同時に見えないところでロシアの戦争遂行能力が急速に「出口」へ向かっているという事情もあるようです。ですから、交渉に当たっては冷徹かつ全ての選択肢をテーブルに並べるというプロフェッショナルの仕事が必要です。とは言うものの、そんなプロというのは、判断力の歪みが見えるプーチンも含めて今回の状況には存在しません。
ですから、恐らくは各プレーヤーが最善手からは「ズレて」くる可能性があります。その結果として、相当に「悪いアウトプット」となる可能性もありますが、どこか落とし所へと落ち着く可能性もないわけではありません。その最終的な着地点としては、
「東部諸州の全部ではなく、半分よりやや広い地域の独立、親ロシア国家化」
「ウクライナは年限を切り、不侵攻の条件をつけた上で、NATO非加入。安全のための保障駐留は有志連合方式で」
「ブチャ虐殺、小児誘拐、原発攻撃の3つの国際法違反/戦争犯罪については中間的な合意、例えばブチャは戦犯逮捕、誘拐と原発は原状復帰だけ・・・など」
「プーチン、ゼレンスキーの双方が円満引退」
というような叩き台から微修正を繰り返す中で、見えてくるのだと思います。
反面、最悪の事態というのも想定しておかねばなりません。それは、
「アメリカが一切関与せず、武器弾薬も資金も供与を停止」
「戦況はロシアに有利な中で、ゼレンスキーが現状の占領地域の割譲を認めて降伏」
というストーリーだけではありません。問題は、そこで終わらないという場合です。そのようなウクライナ降伏劇の直後に、
「アメリカの欧州関与がほとんどゼロという状況を踏まえて、ロシアがベラルーシと共に、テロに加担したという口実からバルト三国のリトアニアに侵攻。アメリカは無視」
というような展開があった場合です。ただし、これだけでも最悪にはなりません。アメリカ以外のNATOが頑張って、ロシア正規軍との直接の交戦は避けながら、ラトビアとエストニアを強力に守りつつ、リトアニア解放の強い圧力を維持するのであれば、まだまだ最悪ではありません。ウクライナと違って、中国が、「プーチン後」を意識しながら、完全に中立もしくは西欧寄りの立場から圧力をかける可能性もゼロではないと思います。
最悪なのは、西欧諸国が、例えばリトアニアの国境が侵犯されても、全く動かなかった場合です。それでもアメリカが傍観したとしたら、その瞬間にNATOの安全保障システムは崩壊します。
仮にそうなったら、日本は今度は日米安保、米韓安保の消滅という状況に対する覚悟を決めなくてはならなくなります。これは最悪のシナリオです。









