日本をトランプ主義から救うのは「日中同盟」か「日露同盟」か?在日米軍撤退に現実味、ビジウヨファンタジーで国は守れず

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ウクライナと欧州に冷淡なトランプ大統領。日本も近い将来の日米安保消滅を絵空事と笑えなくなってきた。これに関して、「日本の最善手は現状維持である」としながらも、在日米軍撤退シナリオにも真剣に備えるべきだと指摘するのは米国在住作家の冷泉彰彦氏。わが国に中国とロシアを“同時に”敵に回す余力はない。アマチュア商業右翼のようなファンタジーではなく、より現実的な外交・軍事戦略が必要になると警鐘を鳴らす。(メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:トランプ主義がアジア安全保障に適用の可能性

ウクライナを見捨てるアメリカ。日本への影響は?

本稿の時点で、アメリカは相当程度、ウクライナを見捨てようとしています。この動きは、東アジアにも及ぶのでしょうか?その場合の日本への影響を考えつつ、対抗策を用意するには、そもそもどんな考え方をしたら良いのでしょうか?

様々な議論が必要なテーマですので、思考実験を含めて問題提起しておきたいと思います。

その前に現時点では、アメリカ国内において、イーロン・マスク氏の主導するDOGE(政府効率化省)のリストラ策が、ほぼ日替わりで提案されており、社会を激しく揺さぶっています。ちなみに、日本をはじめ、多くの国が財政の悪化に伴って行政改革をしなくてはと思うのは、実に良くある話です。

その場合にターゲットとなるのは、例えば国立公園保護だとか、国立博物館、国立楽団といった文化的な支出、この辺りが最初に来ることが多いわけです。また、各種の産業に向けた補助金、あるいは外国へ向けた援助なども削減対象になるのが普通です。今回のDOGEにおいても、こうした「削減しやすい」省庁については真っ先に手をつけています。

ところで、過去のアメリカもそうですが、多くの場合は「行政改革」だとか「小さな政府」を目指す運動というのは、保守的な立場が推進するケースが多いようです。そうなると、治安とか安全保障というのは、どちらかと言えば強化するという立場を伴っています。そこで出てくるのが「夜警国家」という考え方です。

これは、政府の多くの官庁は削減するし、公務員も減らす。けれども安全保障を担う軍と、治安を担う警察はしっかり予算を確保するという考え方です。もっといえば、経済成長とか福祉というのは民間に任せて、国家というのは軍隊と警察を中心とするのがいいというわけです。

今回のトランプ運動が画期的なのは、この夜警国家という考え方も捨てようとしている、ということです。そこは保守ですから「強いアメリカ」というようなスローガンはあります。ですが、特に連邦政府(中央政府)のリストラにあたっては、軍も容赦はしないという考え方があり、これはあまり前例はないと思います。

具体的には、マスク氏の率いるDOGE、あるいはトランプ政権の全体としては、軍事というのも削減対象になっています。今回のウクライナ和平の進め方も、この考えがベースになっています。

ウクライナと欧州に冷淡なトランプ大統領

本稿の時点では、ヴァンス副大統領がミュンヘン安保会議で「欧州は自分で安全を確保せよ」とヨーロッパを突き放し、大問題になりました。

これに対して、例えばウクライナのゼレンスキー大統領は「こうなったら欧州軍を創設してはどうか」という提案を行っています。それはともかく、最新の状況としては、サウジのムハンマド皇太子を「仲介役」として、トランプ=プーチン会談の実現が進められています。

現時点で話題になっているのは、以下のような提案です。

「アメリカがこれまでウクライナに投入した(数千億ドル=数10兆円)の支援については、和平後のウクライナはアメリカにレアアースを提供することで、弁済する」

「ウクライナはNATOに加入しない」

「クリミア半島はロシアが領有する」

この3点については、現時点でほぼ「前提条件」になっています。これに加えて、

「ロシアは、現在占領しているウクライナの東部諸州の編入を主張。ウクライナはもちろんこれに反対」

「ウクライナはNATOに入れず、またアメリカが今後も冷淡であれば、自国の安全が保障されないので、全欧州がウクライナの安全を保障するなどの仕組みを模索」

という交渉が動いています。

ヨーロッパ各国は、とにかくアメリカが極端に冷淡になっているために、現時点では態度を決定するためにパリで協議中です。協議がまとまった場合は、マクロン大統領が代表してトランプと会って調整が行われる可能性がある、そんな報道もあります。

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