「戦う準備はできている」中国の駐米大使館がSNSに“ケンカ腰”で発した米トランプ関税への回答

Toronto,,Canada,-,February,17,2024,Donald,Trump,And,Xi
 

大統領に返り咲くや、遠慮会釈なく各国に関税戦争を仕掛けるトランプ氏。その矢面に立たされている中国はといえば、アメリカに対して厳しい言葉で自らの姿勢を表明しています。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』では著者の富坂聰さんが、王毅外相の発言や駐米中国大使館が発したメッセージの意味するところを考察。さらに中国がトランプ2.0の関税攻勢に冷静に対処できている理由を解説しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:対トランプで「ディールには応じない」姿勢を貫く中国の勝算

勝算はあるのか。対トランプで「ディールには応じない」姿勢を貫く中国

中国に(関税という)圧力をかけ続けるなら、われわれは徹底して抵抗する──。

北京で開会された全国人民代表大会(全人代)に合わせた内外記者との会見に臨んだ王毅外相は、第2次トランプ政権(2.0)との関係を問われてこう断じた。「中国を抑圧しつつ良好な関係を発展させられるという幻想を抱いてはならない」とも述べた。

ケンカ腰にも聞こえる中国の反応だが、もはや驚きはない。米中対立が急速に悪化すると予測する声も聞こえてこなかった。

理由は2つある。

1つは、中国のこうした反発には既視感があり、予定調和な印象を拭えないからだ。

実際、王毅自身も2月14日のミュンヘン安全保障会議で、「アメリカがさらに圧力をかけるなら、われわれも最後までつきあう」と発言したばかりだ。

2つ目の理由は後に詳述するが、中国は「対決」を前面に打ち出しながらも、一方で「話し合いによって妥協点を探る」呼び掛けも、常に発信し続けているからだ。

欧米メディアが「聞く耳をもち、話し合いには応じる姿勢」(BBC)、「慎重な姿勢で臨んでいる」(米ブルームバーグ)と中国を評したのは、こうした理由からだ。

その上で中国の「最後までつきあう」の意味を考えてみたいのだが、それはどの程度の対立を想定しているのか。

中国の駐アメリカ大使館がSNSで発出したメッセージは、王毅発言より、さらに踏み込んだ。タイトルは「トランプ関税への回答」だ。

関税戦争、貿易戦争、また別のあらゆるタイプの戦争にも中国は最後まで戦う準備はできている。

「腹を括った」と意訳できる。

もちろん、「腹を括った」からといって現状の「冷戦」を直ちに「熱戦」に変えてもかまわない、という意味ではない。

中国のこれまでの主張をまとめてみれば、

  1. アメリカの覇権に挑戦するつもりもなければ興味もない
  2. 但し、競争から下りることはないし、もし中国の発展という正当な権利を侵害するのならば受けて立つ
  3. 対立のデメリットに目を向け、中米は協力というウインウインのメリットを重視すべきだ

という3点に集約できるだろう。

3.の主張の具体的な例は、関税である。

中国からの輸入品に関税を上乗せしても、対中貿易赤字は減少しない。そのことはこれまでの歴史が証明しているし、関税は結局アメリカの消費者の負担となるだけだからだ。確かに、中国の輸出業者にもダメージは及ぶが、結果として双方が傷つき、損害はむしろアメリカ側に大きいことは明らかなのだ。

であれば米中両政府がきちんと話し合い、交渉により双方にメリットのある関係を模索することこそ、より効果的な解決策ではないかと中国は繰り返してきた。

至極まっとうな主張だが、問題はこの考え方にトランプ政権が耳を貸すのか否かだ。

中国を批判し敵視することは、いまのアメリカの政界では完全な「コレクト」で、また票にも繋がる。そんな状況下で、正論がどこまで通用するのか、という問題だ。

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