トランプがまったく理解していない日米安保の基本
もう1つの理由は、トランプ第2期政権になって、彼の気紛れと言うか精神分裂的な発言の不整合で何がどう転がるかは全く不可測だが、まかり間違うと本当に米側からの在日・アジア米軍基地撤退の機運が生じるかもしれない情勢となってきたことである。
トランプ大統領は、3月6日にも「米国は日本を守らなければならないが、日本はどんな状況になっても米国を守る必要はないというのは不公平だ」という主張を繰り返した。これは日米安保についての古典的とも言うべき最も幼稚な理解で、
- 日本の軍国主義復活を恐れて再軍備を禁じ(憲法第9条)、
- 安保条約を結んでも日本に集団的自衛権の名の下で米軍と共に海外で戦争に従事することを禁じ(安保第5条)、
- その代償として米軍がどこにでも好きなだけ駐留して「極東の平和」のために自由に出撃することを日本に容認させる(同第6条及び日米地位協定)、
──という日本属国化の枠組みを作ったのは、他ならぬ米国である。しかもこの在日米軍は「極東」の範囲を遥かに超えて、太平洋からインド洋、ペルシャ湾に至る広域をカバーしていて、日本における駐留・補給・修理・兵員休養などの総合的な基地機能なしには米軍は地球の約半分での活動を維持することが出来ない。そういう日米安保の米国にとっての重要性をトランプは全く理解していない。
そこで日本としての対処法の1つは、このような「日米安保片務性」論に対して、いま述べたような安保5条・6条の「歪んだor捻くれた双務性」論を対置して、噛んで含めるように理解させることである。
が、多分それはトランプの関心領域と理解能力を超えている。そうなると、日本人の魂をとっくに失っている買弁的植民地官僚の採り得る方策はたった1つで、そこでの真正面説得を諦めて、「米国製の高額兵器を買い増すからお許しを」と宥めすかすことでしかないだろう。
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