虫歯菌の代表として知られているのはストレプトコッカスミュータンス菌とラクトバチラス菌ですが、いずれもその餌は糖質なので、さもありなんです。
縄文人は、「採集」「漁労」「狩猟」の三つの生業で食べ物を手に入れていました。
縄文時代というと、狩りで得た肉を主に食べていたというイメージが強いのですが、実際には植物採集の割合が高かったと考えられています。
特にクリ、クルミ、トチ、ドングリ類などの木の実は主食といえるほど食べていました。
これらには糖質が一定量含まれていますので、昔のアメリカ先住民やイヌイットよりも、虫歯率が高かったのだと考えられます。
日本の旧石器時代は、ナウマンゾウ、オオツノジカ、マンモスといった動物の狩猟が主な生業でした。
これらの肉には糖質はほとんどなく、この時代の日本人は、虫歯率はゼロだったとされています(古病理学辞典)。
ちなみに日本の旧石器時代は、最終氷期(ウルム氷期:約7万年前-約1万6千年前)と呼ばれるかなり寒かった時期で、針葉樹林に覆われた地域が多く、そこでは食料となる植物資源は極めて乏しかったのです。
暖かくなった縄文時代でも、北海道の住民には虫歯が少なく2.4%くらいでした。
これも当時の北海道の環境(青森以南に比べて寒冷)や食生活が関係していると考えられます。
北海道の縄文人は「漁労」「狩猟」の二つが主な生業で、クリやドングリなどの「採集」がなく、鹿やイノシシなどの動物、魚や海獣類を好んで食べていたようです。
このため糖質摂取が少なく、虫歯率も低かったのでしょう。
このように歴史的に考察してみると、糖質さえ摂らなければ虫歯の発生はなかったということになります。
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