財務省に愛された男(1) 菅直人氏の場合
消費税を上げない約束で政権の座についた旧民主党が、マニフェストに反する消費増税を打ち出した淵源をたどると、政権交代直後の苦しい状況が見えてくる。
国家戦略相に就いた菅直人氏は省庁縦割りではない政治主導の予算案を作成すると意気込んでいたが、霞が関の壁にぶつかり、マニフェストを実行するための財源確保にメドが立たずに立ち往生した。
すかさずそこに手を差し伸べたのが財務省主計局長、勝栄二郎氏だった。
「衆院選のマニフェストにそってA4の1枚を出してもらえれば、年内編成をやり遂げます」
新内閣発足10日後のことだったという。菅氏は胸をなでおろし、急速に財務省の掌中に取り込まれていく。
その後、菅氏は国家戦略相から財務相を経て首相になった。2010年夏の参院選を前に、突如として菅首相が自民党の提案する「消費税10%」の税制改革案をまとめたいとぶち上げたのも、その背後には財務事務次官に昇任する直前の勝栄二郎主計局長がいた。
この財務省べったりの路線が裏目に出て菅民主党は参院選で惨敗。それでも菅首相は翌年1月14日に内閣を改造し財政健全化の旗振り役として自民党を離党したばかりの与謝野馨氏を入閣させ、大蔵省OBで与謝野氏の東大野球部の先輩、藤井裕久氏を官房副長官にすえて増税・緊縮内閣の体制を整えた。(次ページに続く)









