威嚇行為は「中国への攻撃とみなす」。習近平が台湾とその“友好国”に核ミサイルを撃ち込む日

 

先制攻撃の手段として核兵器を使用することはないロシア

フランスは、英国に呼びかけて、アメリカが欧州の安全保障にコミットしないリスクを考え、英仏が欧州全域に核の傘を提供するような安全保障の仕組みを急ぎ構築すべきだとの考えを述べ、それを欧州各国とウクライナとの対話・協議の場でも繰り返しています。ただ、マクロン大統領の提案は現時点では欧州各国の総意を獲得できていません。

マクロン大統領の覚悟も、バイデン政権下のアメリカが再三かけていた圧力も、対象はあくまでもロシアによる核兵器使用に対する抑止ですが、ロシアによるウクライナ侵攻から3年以上たった今、明らかになってきていることは、【ロシアは(先制攻撃の手段として)核兵器を使用することはない】ということです。

事あるごとにプーチン大統領本人や、メドベージェフ氏などが核兵器使用の可能性について言及することはありますし、前述のようにロシアは核兵器使用に対するドクトリンを改訂して“覚悟”を示す姿勢を取り、また核兵器戦術部隊もon alertにするなど、いかにも核兵器使用に前向きなイメージを醸し出していますが、そのような中でもNot First Useのルールは貫いています。

最新の核兵器使用のためのドクトリンでも、First Useの規定はなく、あくまでも「ロシアの国土が外部からの敵に攻撃され、ロシアの国家安全保障の脅威が生じたと考えられる場合に、核兵器の使用が検討される」という言い方に留まっています。

その観点から見ると、ウクライナが昨年夏の奇襲でロシアのクルスク州を攻撃し、占拠した際には「限定的かどうかは別として、何らかの形で核兵器が使用されるかもしれない」と肝を冷やしましたが、ロシア側は核兵器使用の可能性を選択肢としてテーブルに並べはしても、あくまでも通常兵器を用いた対峙を選択しています。

今週に入ってゲラシモフ統合参謀本部議長がプーチン大統領に対して「クルスク州の全面奪還」を報告していますが、その実情の真偽はともかく、確実なのは“これまでのところ核兵器は使用されなかった”ということでしょう。

以前、英国で開かれた会合に招かれた際に「今回、ロシアが核兵器を使用するといいながら使用できない場合は、核兵器は使用できない兵器・選択肢であることを安全保障と軍縮のコミュニティに示すことを意味する。米ロ中英仏という核保有国がFirst Use(先制攻撃における核兵器の使用)をしないことを公言し、それがこれまで通りに遵守されるという前提が保たれたら、可能性はretaliation(報復攻撃)としての使用に限定される。ただいくら自衛の権利があるとはいえ、核兵器がいかなる形でも用いられた暁には、それは核兵器による交戦を招き、第3次世界大戦が勃発することを待たずに、我々人類の滅亡が訪れることを意味するため、P5=nuclear fiveによる核兵器の使用は考えられない」と話した内容に合致すると思われます。

加えてNuclear Five以外の核保有国(インド、パキスタン、北朝鮮、そして恐らくイスラエル)についても、N5ほどの確度はありませんが、核兵器の存在はあくまでもdefensive purpose(自衛目的)に過ぎず、攻撃目的ではないと言えると考えますので(実際に「我が国に対する攻撃が行われた場合には…」という条件を付けています)、核兵器が用いられる戦争が勃発することは考えづらいと思われます。

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